白西
□幸せな日
1ページ/1ページ
白石side
今日は11月11日。
俗にいう「ポッキーの日」だ。
カップルはポッキーゲームなる遊びに励むのだろうか?そしてそれをSNSにあげたりするだろうか?
そんな例に漏れることなく私も仕事終わりにポッキーを買って恋人の家に向かっていた。
ただ、ポッキーを持って向かってはいるものの彼女がすんなりゲームを受け入れるとは思えない。
昨晩のサッカーの試合よりも遥かに「負けられない戦い」が私には目前に迫っていた。
ピンポーン
七瀬の家に着いてインターホンを鳴らし、「白石です」と告げるとパタパタとスリッパを履いているであろう私の彼女の可愛らしい足音が玄関に近づいてきた。
彼女から発せられるそんな足音程度にでも思わずニヤけてしまうくらいに私は彼女を愛している。
ガチャ
ドアを開けて顔を覗かせる彼女。
そしてその口には、、、
ポッキーがくわえられていた。
白「七瀬?どうしたの?」
西「…ん」
七瀬が何も言わずにくわえてたポッキーの反対側を私の方に向ける。
こういうゲームは嫌がると思ってた七瀬からのまさかのお誘いに、ここは玄関で誰かに見られるかもといった意識は吹っ飛び、1本のポッキーの七瀬の反対側をくわえる。
本来ポッキーゲームはギリギリ止めるのがゲームのルールなのだろうけどこんなに可愛いお誘いを受けて寸止め出来るほど私は誘惑に強くない。
ポッキーなんて余分な助走はすぐにとっぱらい七瀬にかぶりつくようにキスをする。
しばらくチョコよりも甘い七瀬の唇を堪能していると七瀬に肩を叩かれる。
西「まい…ゃん!苦しい…。」
ちょっと目を潤ませながら私に訴える七瀬から慌てて離れる。
白「あ!ごめんね!」
ずっと玄関にいる訳にいかずリビングに移動するとすぐ、またポッキーをくわえて私に反対側をくわえるように催促する七瀬。
そしてまた先程と同様に存分に七瀬の唇を味わう。お互い息が続く限界まで繋がり続ける。
そして名残惜しくも離れると少し疑問に思ってたことを七瀬にぶつける。
白「七瀬がこういうの誘ってくるって意外だね。」
そう。いつもこういうゲームは私から誘うもの。
西「……………やから。」
白「え?」
ただでさえ小声の七瀬が下を向いて小さい声で呟く言葉は当然私には届かない。
聞き返すと意を決したように顔を上げて、
西「いつもキスして欲しくてもななからは言えへんから。こういう口実がある日に言わんと言えへんやろうなって思った…から…ごめん。」
恋人にキスをせがむのにも遠慮しちゃって最後に謝るのも何だか七瀬らしくて。そしてそんなことで顔を赤らめてる恋人の姿がとってもいじらしくて。
七瀬を引き寄せて今度はポッキーなんて挟まずにキスをする。
白「七瀬がそんなこと思ってくれてたなんて嬉しい。七瀬が言い出せない分もっと私がグイグイ行くから!」
そしてまた触れるだけのキスをすると
西「1日に4回もキスしたの初めてやな。」
少し照れたように微笑む彼女がたまらなく可愛くて
白「何回したかなんて数えてられないくらいしてあげる。」
そして私は何度も何度も七瀬と唇を交わらせた。
今日は間違いなく今年で1番幸せな日。
でも、良いよね?今日はポッキーの日だけじゃなくて唯一「1」が4つも並ぶ日なんだから。
11月11日。ポッキーの日は1年で「1」番私が幸せを感じる日。