白西
□タンポポと星
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白石side
降りしきる雨の中、私はたった1輪だけコンクリートで悲しげに咲くタンポポを見つめながら立っていた。
いつからかこの花に私の好きだったあの子の面影を重ね合わせていたんだ。
七瀬がこの世からいなくなってからしばらくが経ったけど私は七瀬を忘れることが出来ていないままでいた。
雨は大好きなはずなのに、七瀬を助けるために身を挺して降る雨からタンポポを守ったあの日以来雨がやけに冷たく感じるようになった。
タンポポという花はまさに七瀬だと思う。
バラとかに比べると派手さは無い。でも可愛らしくて儚い魅力があって、どんな環境でも根を張れる強さも持っている。
何をしたらあの頃に帰れるかな?まだ七瀬が生きていたあの頃に。
ふと顔を上げると雨は上がっていて星空が見えた。
亡くなった人のことを星になったって表現することがあるのは知ってる。七瀬はどの星になったんだろう?そして何回夜を越えれば流した涙は強さに変わるのかな?
そんなことを考えるたびに、季節が巡って街の景色が変わるたびに七瀬への想いが溢れる。
会いたくて、愛おしくて、触れたくて。
でももうそんな想いは決して七瀬には届かない。伝わらない。叶わない。
それがとても苦しくて。
何度も七瀬と同じ場所へと行こうと思った。
そんなことを思うと必ず私はここに来る。
人はいつかは死ぬ。花もいつかは散る。
でも花はその決められた期間で精一杯色鮮やかに咲いている。
七瀬もそうだった。私たちより遥かに短い間だったけど間違いなく存在して、そして確かに色鮮やかに咲き誇っていた。
タンポポを見て七瀬を思い出して、生きる勇気を貰う。
白「七瀬、空から見ててね?私、七瀬のそばに行くまで精一杯この世で咲いてるから。七瀬の所からでも見えるくらい色鮮やかに。」
七瀬がいないこの世に絶望しないために星に向かって言うと、空の向こうで七瀬が笑ってくれた気がした。