白西

□臆病な私と踏み出す勇気
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西野side

それはまさに青天の霹靂の出来事やった。


白「西野さん。次のソフトの決勝戦、もし良かったら応援に来てくれないかな?」


2つ上の先輩でななたちが通う乃木高のマドンナ的存在の白石先輩が、急にななたちの教室に来てそう言った。


桜「ねぇ!返事しないと!」

若「どうするの?行くに決まってるよね!?」

玲香や若が少し興奮したようにななに聞く。


でもネガティブなななには白石先輩がななを誘ってくれるなんてこと信じられへん。


ななは白石先輩に憧れている。そんな憧れの先輩から声をかけられたことも、そもそもななの名前を知っていることにさえビックリしてる。

変に期待して、結局ただの遊びだったら悲しくて立ち直られへん。だったら期待しない方がマシや。


白「嫌かな…?」

何も答えないななにちょっと困ったように白石先輩が尋ねる。


そんな顔もカッコ良すぎてななは思わず、

西「行きます!」

と答えていた。



そう答えたのは良いもののななの悩みは尽きない。


折角誘ってもらったんだからお弁当くらい作っていった方が良いかな?迷惑かな?なな、料理下手やし。でも何も持っていかないのも…。


そもそも白石先輩には恋人じゃないかと噂されてる橋本先輩というとても綺麗な人がおる。橋本先輩とは何もないんかな?ただの噂なんかな?それともななが弄ばれてるだけ?



お昼休み。悩んでても1人じゃどうしようもなくて若と玲香に相談する。


若「何言ってんの!わざわざ誘いに来てくれたんだよ!?チャンスだよ、チャンス!ずっと好きだったんでしょ?」

西「でも、何でなななんかを…?可愛ないし、地味やし…」

桜「なぁちゃんは可愛いよ!自信持って!それになぁちゃんが好きになった白石先輩は後輩を弄ぶような人なの?違うでしょ?」


ななと同い年のはずの2人はななよりもずっと大人で、いつもななを励ましてくれる。


西「そうやな…!頑張ってみる!」

2人に励まされて少しだけ勇気が出た。



試合当日

試合前に白石先輩に会いに行く。ユニフォーム姿の白石先輩もキラキラしててカッコよくて。早起きして作った、とても上手とはいえないお弁当を笑顔で受け取ってくれた。


白「観ててね。絶対勝つから。」


そう言って白石先輩たちはグラウンドへ走っていった。


でも白石先輩の言葉とは裏腹に試合は相手チームのリードで進んでいく。


そして迎えた最終回。点差こそ1-0なものの試合の流れは向こうチームにあることくらい、ソフトにあんまり詳しくないななにもわかる。

西「頑張って…」


ノーアウトで白石先輩の前のバッターがヒットを打って塁に出る。

次は白石先輩や…。打って…。
ななも必死に祈る。

しかし、白石先輩がベンチを振り返り監督から出るサインを見た途端、顔をしかめてベンチへと戻って行く。

どうしたんやろう?と思っていると最前列で応援していたななに白石先輩と監督の声が聞こえてきた。


白「バントってどういうことですか?」

監「最終回だし、確実に点を取る為の作戦だ。」

白「嫌です。打たせてください。」

監「それで負けたらどうするつもりだ?全員の夏が終わるんだぞ。責任取れるのか?」

白「チャンスに攻めないと勝てません。」

監「…好きにしろ。」


監督との会話が終わり、白石先輩がグラウンドに戻って観客席を見る。その時、一瞬だけどななと目が合ったような気がした。

バッターボックスに入り、構える白石先輩。

相手チームの投手が投げた球に白石先輩のフルスイングが当たり、快音が響く。


数分後、ななはグラウンド上で抱き合いながら喜んでる白石先輩たちを見ていた。白石先輩の打球はフェンスを飛び越え、逆転ホームランになったのだった。


勝利の余韻に浸りながら帰っていく観客の人たちに紛れてななは


若『チャンスだよ、チャンス!』

白『チャンスに攻めないと勝てません。』

そんな2人の言葉を反芻していた。


乃木高の選手が出てくるところで待っていると、選手たちが出てきて応援してくれてた人たちへ挨拶する。当然白石先輩もそこにいて、ななに気付くと笑顔でガッツポーズをしてくれる。

そうやんな…。チャンス…やんな。

監督が「解散!」と告げるのと同時にななは白石先輩に駆け寄る。


白「西野さん。見ててくれた?勝ったよ。」

西「見てました。ホンマにカッコ良かったです。」


ななの言葉に満足そうに頷く白石先輩。

チャンスに攻めないと…後悔が残るから…。


西「あの!白石先輩!」


突然出した、ななの大声に白石先輩は少し驚いた顔をしている。


西「ななは…ななは、先輩の彼女になれますか?」



ななも、恋の逆転ホームランに賭けてみた。



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