白西

□今日だけは
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白石side

私は真冬の海岸に向かっていた。どうしても行きたいんだ。とある決意の為に。


私と七瀬と沙友理は幼馴染。今向かってる海岸も昔から3人でよく遊んだ場所だ。

だけどこのガラガラのバスにいるのは私と七瀬の2人だけ。


バスを降りると吹き付ける冷たい風に対抗する為に自販機でコーヒーを買い、七瀬の手を握りコーヒーと一緒に私のコートのポケットに入れる。


今はもうあの子の彼女だってわかってるのに、誘ってごめん。


勝手だと思うよね?私の恋は終わってるのに、思い出が先行して突然電話をかけてしまった。


幼馴染だから。他の友達よりも近いから。様々な理由で告白を先延ばしにしていたが、幼馴染は私1人じゃないってことにまで考えが及ばなかった自分。


防波堤に2人で腰掛けて改めて気付いた。大切な宝物は失ってからその大切さが見えてくるんだって。


もう時間は巻き戻せないから。切ない気持ちで寄せては返す波を見つめる。


私の気持ちに七瀬は気づいてるのかな?何も言わずに付き合ってくれた今日1日が、私にとっては永遠のように感じる。


いてくれればいいから。私の1番すぐそばに。昔と何も変わらずに。


2人なのは今日だけ。明日になれば、ちゃんと友達の3人に戻るから。


だからお願い。最後に今日だけ私の愚かな愛に付き合って。あの夕日が隠れてしまうまでは。



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