噂の五人姉妹

□第4話 相合傘
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あっという間に、午後の授業が終わり、帰ろうと教室から出ようとすると嫌な単語が聞こえてくる。

桜「ねぇ、若月雨降ってるよー」

若「えー今日傘持ってないよ」

「奇遇だね若月、私も持ってないんだ」

桜「ふ、ふ、ふ、じゃじゃーん!私折り畳み傘持ってる!」

若「さすが私の彼女!」

桜「えへへーあ、相合傘だね?」

若「恥ずかしいけどしょうがないかー」

無視か、そうか、いちゃつくのに忙しくて無視なのか
いや違う、私が無視してるんだ
このいちゃラブバカップルは無視しよう
うん、そう、そうしよう。
むしろ、あんなのと一緒に帰ったら胸焼けしそうだ

「あ、ねぇかn」

花「真夏」

真「うん、私も持ってるよ」

花「私副会長の所行ってから帰えるからちょっと待ってて」

真「分かった、ご褒美に手繋いで帰ろ?」

花「しょうがないなぁ…分かったよ」

真「やった!早く帰ってきてね!」

花「はいはい」

ダメだ、ここも冷たそうに見えてアッツアツなんだった。

なんだんだ、ついてなさすぎる。あと、副会長ってだれだ。

なんてことだ、友人も少ないことを自覚させながら、救いの手さえ差し伸ばさず、無言でこれ程までにメンタルをボロボロにしていくとは…

恐るべしリア充…

元々1本だった枝のような心を何回もポキポキと折られ、もう濡れて帰ろうと決意して、椅子から立ち上がるとなにやら廊下が騒がしい。

「Siro。お姉ちゃん一緒に帰ろ、傘持ってないでしょ?私折り畳み傘持ってるから」

ポキポキと折られた枝が一瞬にして1本に戻った。

「あ、あすかぁぁぁあああー!!」

乾いた心に飛鳥の優しさが染み渡り、思わず抱きしめてしまった。

「ちょ、Siro。姉ちゃん、うるさい、あと苦しい、、」

「やっぱり、持つべきものは妹だねぇ〜」

「お姉ちゃん、みんなに見られてる、恥ずかしい」

「あ、ごめん、じゃあ早速帰ろうか」

「うん」

「ほら、手繋ご?家のルールでしょ?」

「ん」

手を出すとちょっと頬を赤らめながら、控えめに握られた手は、少し冷たかった。

「よーし、今日は私が飛鳥を独り占めしちゃおうかなぁ〜」

「しょうがないなぁ、特別に独り占めされてあげる。」

「ありがとうございまーす」

「じゃあさ、こないだ読んだ本なんだけど、凄い面白かったから、すぐ読んで、感想言って!」

「お、いいぞー、本かぁー久しぶりに読むなぁ」

「ふふふ、早く帰ろ!」

「あ、こら飛鳥廊下は走っちゃダメでしょー」

下駄箱に近づくにつれ、人が増えてきた。

「なんだこの人、お姉ちゃん達かな」

「ふーん、ほっといて早く行こうよ」

「うん、でも入口にいるっぽい」

「あっそ…」

1年生と2年生だと下駄箱の位置が違うから一旦手を離し、それぞれ靴を履いて、入口に行く、

「どっちのお姉ちゃんかなぁー?って、七瀬お姉ちゃん!?」

「あーやっときたー!もう遅いねんアホ!帰ったかと思ったわ」

「あーごめん、ちょっと心がポキポキしてた、じゃなくて、なんで七瀬お姉ちゃんがここにいるの?」

「なんやそれ、あーそや、これ届けにきた」

「あ、傘!ありがとう!ってなんで1本?」

「麻衣姉と奈々未姉はどうせ美彩さんの車で送ってもらうだろうし、飛鳥は折り畳み傘持ってると思ったから、あ、ほらな?」

少し遅れてやってきた、飛鳥は七瀬お姉ちゃんをみて、驚いた顔の後に、少しだけ嫌な顔をした。

「なんで七瀬お姉ちゃんがいるの」

「Siro。の傘届けに来たんやけど、間違えて、1本しか持ってこなかったから飛鳥は自分の折り畳み傘使ってな」

「は?」

「なな達は二人でこの傘使うから」

「そ、そんなのだめにきまってんじゃん!てか、絶対わざとじゃん!」

本当に嫌なのか目を少し潤ませて、反抗してくる

なに?そんなにお姉ちゃんと一緒に帰りたかったの!
えへへ、お姉ちゃんちょっと嬉しい

七瀬お姉ちゃんを見ると、どうにかしてと目で訴えられた。まったく、自分で蒔いた種なんだからちゃんと回収してよね。

しかたなく、飛鳥の目を見て頭を撫でる。

「ほら、飛鳥。一つの傘に二人で入ると、結構濡れちゃうから、飛鳥は一人で使って?お姉ちゃん飛鳥が風邪ひいたらやだから、ね?」

「、、分かった、でも家帰ったら本…」

「うん!それは約束する!飛鳥が気に入った本だもん、超気になる!」

「じゃあ許す…」

顔は超嫌そうだけど、何とか許してくれた。

七瀬お姉ちゃんは呑気にしゅっぱーつとかいいながら傘を開く。

私もその傘に入り、後ろには飛鳥があまり間隔を開けずについてくる。

「もー七瀬お姉ちゃん、人任せにしないでよ」

「ごめんごめん、でもあーゆうときはSiro。に任せといた方が早いから」

「もーしょうがないなぁ」

「ほら、そのお陰でこうやってSiro。とくっつける!」

「ちょ、くっつきすぎだよ」

七瀬お姉ちゃんはニコニコしながら腕を絡ませくる。

まぁ、そうすると自然と顔の距離も近くなるわけで

凄いかわいい顔が近くにあるとたとえ姉妹でもドキドキしてしまう。

それに高校時代ファンクラブがあった人と今もある人が近くにいるから、周りからの視線が痛いほど伝わってくる。

特に後ろからのもっと離れろよオーラが凄い…

「ええやん、くっつかないとお姉ちゃんが濡れちゃうやろー?」

余計にくっつかれた。やばい、ドキドキしてるのバレる

「ちょ、七瀬お姉ちゃ「やっぱりだーめ!!」」

「え、飛鳥?」

「七瀬お姉ちゃんは私とSiro。お姉ちゃんは一人!異論は認めん」

「でも、飛鳥濡れちゃうよ?」

「くっつけば濡れないんでしょ?七瀬お姉ちゃんとくっつくからいい」

そう言い残して、七瀬お姉ちゃんを腕を引いてさっさと帰ってしまった。

そうか、飛鳥は七瀬お姉ちゃんと相合傘したかったのか
お姉ちゃんちょっと悲しいな

まぁ、いいよ、今日は濡れずに帰れることに感謝しよう。

そうだよ、あはは、、、
雨が再び乾いた心に染み込んで行く気がした。
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