台本小説

□要らない魔鬼の嫉妬のお話
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エレン(普通の子に、なりたい)一人座り込む
「ねぇ、あの子でしょ?」遠くにいる魔鬼
「そうそう、あの子よ」
「魔力が普通よりも多いだけで魔導が全然身につかないっていう」
「宝の持ち腐れとはこういう事よね…一族の恥だわ」
「本当に、私たちは色んな種類の魔法が使えるのに、あの子は水魔法しか使えないなんて」
エレン(聞こえてる、見えている…ボクの居場所はここではないのかな…ボク以外の子は皆四種類以上の魔法が使えるのに…ボクは一種類だけなんて…)

この一族の普通が出来る子供たちに、嫉妬した

「この水色の髪、俺の色でもお前の色でもないじゃないか」
「それは前も話したでしょう?特殊変異よ、私が浮気したっていうの?」
「そうとは言ってないが…」
「じゃあなんなのよ!」
エレン(ボクがいるせいで今日もお父さんとお母さんが喧嘩してる)

そんな時に絵本を読んだ、とあるお姫様と王子様が中睦まじく結ばれるお話
自分では到底無理だと思われる愛に、嫉妬した

ボクは耐えながらも何年かをこの集落で過ごした
でもある日、ボクではなく村のみんなが耐えきれなくなった

「お前の父さんも母さんも病で死んだというのに何故お前にはかからない!?その周辺にいたものは皆死んでいるというのに!」
「お前が原因だ!それしか有り得ない!」
「いなくなってしまえ!」
エレン「ボク、の…せいなの…?」

責め立てられて、殺されそうになって、必死に逃げた
追いかけられるのではなく追いかける側ならどれだけ楽だったろうか
嫉妬して、嫉妬して
普通に焦がれて
いつか見た愛のお話が頭から離れなくなってきて
そんな時出会ったのはとある青年だった

青年「君は…魔鬼だね?そんなに慌ててどうしたんだ」
エレン「っ…その、おいかけ…られてて…」
青年「何かしたのかい?」
エレン「何もしてないよ!!ボクは…何も…!」
青年「…そうか、じゃあ匿ってあげよう」

優しい青年のお陰で追いかけられることはなくなった
それから暫くボクは青年の住む村で過ごした
魔法は使わなくてよかったし何しろみんな気さくでとても楽しい日々が続いた
これが自分の求めていたものだったのだろうと疑うこと無く信じた

でも、違った
エレン「だ、だれ!?」
傭兵「エレン・リルだな、連行する」
エレン「なんで!ボクが一体何をしたっていうの!?…っ!ねぇ、助けて…!」
縋るように青年に助けを求めた
だけど返ってきたのは
青年「何を逃げようとしているんだ?お前はここに来た時点でこうなる運命だったんだよ」
ボクの何かが崩れる音がした
その時、なにかの声がした
『なぜ自分ばかり、そう思うのか?普通の人生を送る者達全てが妬ましいか?』
当然だ、妬ましくて仕方ない、今もどこかで笑って過ごしているであろう他の生物全てが
妬ましい!!!

solidele dolore発動
多分、この時のリンク魔法は村全体にかかってた
そんなこと知らないボクは何故か困惑しだした傭兵に護身用にと持っていた短剣を
躊躇うことなく突き刺した
傭兵「がはっ」
鮮血を浴びながらも自分の怒りが収束することはなかった
無いと思っていた
だけれども…傭兵が力尽きたように倒れると自分の周りにいた青年が似たような動作をして倒れ込んだ
嫌な予感がして外に出ると村で立っているのは自分だけであった


エレン「な、に…これ…こんな、こんなことしたかった訳じゃ…!」

暫くボクは錯乱状態だった様で、この時の記憶はあまり無い、多分3日ぐらい経つと王様がやって来てボクを半ば無理やり仲間にしてくれた、はずだ


アルス「どうしたエレン、なにか考え事か?」
エレン「んーちょっと昔のことを」
アルス「そうか、昔のエレンは私から離れなかったな」
エレン「だって好きだったんだもん」
アルス「あぁ、そうだったなぁ」
王様がボクを仲間にしてくれて、その時やっと自分が大罪人になっていたことも知り名前をエレン・インビアに変更した
…だからボクは、リルの頃の自分を彼女と呼ぶ
今はもう過去のお話で、ボク的にはあまり大事なことじゃないし…ね
彼女が戻ってきちゃったりしたらボクはこんなに大事な家族を失ってしまうかもしれない、そんなのは嫌だ
だからボクは今日も嫉妬をせず…
アルス「フシルー!飯を食べろと言っただろう!」
フシル「知りませんそんなこと!」
エレン「…むぅ」

まぁ、極力、しないように……ね?






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