長編

□Inperfect hearts #2
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菜々side




あれは自分の不安が見せた幻やったのか
それとも現実やのか



それを確かめる前に呼吸が苦しくなり、そのまま吸い込まれるように意識がなくなった。




次に見えた光景は幼いころの自分たちの姿やった。




もちろん私の横には彩がいて、彩の隣には里香、その隣がアカリン。
まーちゅんは…彩とは反対側の隣や。
5人で仲良く手をつないでる。
みんな笑顔で、でもどこか寂しそうやった。




ああ、これは彩が引っ越す前の日やな。





村の真ん中の広場で「じゃあね」ってみんなと別れて。
私と彩は家が隣やから、二人で並んで歩く。
私もこの時は今よりは全然元気で…




「なあしゃーか?ついてきてくれへん??」
「ええけど…山田は大丈夫なん?」
「平気や、へーき」



私は彩ってうまく呼べなくてしゃーかって呼んでた。
彩は私のことを山田って呼んでいて。
いつも私のことを心配してくれていた。
私は彩をとっておきの場所に連れていきたかったんや。
山から海が見えて、さえぎるものなんてないからすっごくきれいなんや。
山で迷子になったときに見つけたんやけど、みんなには内緒にしとった。





「ここやで、しゃーか。きれいな景色やろ?」
「せやな、むっちゃきれいや」
「なあしゃーか。また会えるやんな?」



私は不安で不安で仕方なくて
そしたら彩はあの約束をしてくれたんや。



「当たり前やろ。もっとかっこよくなって山田を迎えにくるからな」
「しゃーか…」
「やから山田も頑張るんやで」
「うん!」



二人ともなきながら、でも笑っとった。
でも今思うと変なセリフや。
彩はボーイッシュだったとはいえ、女の子なんやから。



すると彩はすーっとその景色に吸い込まれるように消えていった。




「…しゃーか?どぉこいったん??あ…」




そこに広がっていたのは、見慣れた病院の無機質な白い天井やった。
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