とある異世界の一方通行

□能力
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「三上、質問いいかい?」

私と与謝野さんは、医務室の椅子に座っている。
綺麗になった私の制服に着替えましたよ。

太宰さんと国木田さんは、仕事があると言って出ていった。
本当は、きっと私の報告だろうね。三人共、タメ口で話してたから、他に社長さんみたいな人がいるんだろう。

「はい、なんですか?」

「……三上、あんたはその学園都市で超能力を開発されたんだね?」

与謝野さんは、戸惑いながらも私に聞いてきた。

「はい、能力者です。
そうですね、ええっと、私の力は……、運動量とかのベクトル(力の向き)を変えられる力なんですよ。
私は、もっと超能力らしい力が良かったんですけどね〜」

瞬間移動とか、念動力とか……

「へぇ」

与謝野さんは、にやりと口角を上げた。

「あぁ、この髪、瞳と肌の色は、能力で紫外線を反射させていたのでこうなりました。」

自分の腰まである白髪をかきあげる。

「それは良かった。アルビノは大変だからねぇ」

与謝野さんは、笑った。
さっきみたいな笑い方じゃなくて、素敵な笑顔だ。

「はい。

あの、私も質問いいですか?」

「あぁ、もちろん。」

「与謝野さん、みだれ髪ってご存知ですか?」

彼女は、なんだいそれはと怪訝そうな顔をした。

知らないのか……よさのあきこだよね……?

「じゃあ、君死にたまふことなかれは?」

与謝野さんは椅子を荒々しく鳴らして立ち上がった。

彼女の顔つきが一変した。
目を見開いて私を見ていた。

これは知ってるの?

「なんで知っているんだい!?
三上!あんたは、異世界の人間だろう!!?」

肩を掴まれて、ぐらぐら揺らされる。

「よ、与謝野晶子って名前は、有名なんですよ!!」

ぐらぐらしている視界で彼女を捉えた。

「さ、更に言うと、太宰治も国木田独歩も有名ですよぉ!!」

肩が軽くなった。

「本当かい……?」

「えぇ、テストにでてきましたよ……」

与謝野さんは、椅子に力なく座った。

「あの、君死にたまふことなかれは、なんなんですか……?」

彼女の顔を覗き込む。

「そうだねぇ、三上の能力を教えてもらった訳だしね。」

「はい、?」

与謝野さんは、また素敵な笑顔を浮かべた。

「妾の異能力だよ。」

異能力

国木田さんが異能力ならあると言っていた。

「妾の異能力、君死給勿は、ある条件下であらゆる外傷を治せるんだ。」

治癒能力……

私は、与謝野さんから床に視線を落とした。

「そうですか……」

なるほど、死なさないってことか……


扉が開く音がした。

「あきちゃん」

「は、はい。」

声をかけられ、驚いて扉の方を見る。
そこには、太宰さんがいた。

「どうしたんだい、太宰」

「あきちゃんのことなんだけどね。」

太宰さんは、中に入りこう言った。

「とりあえず、この武装探偵社に入ってもらうことになったんだ。
それでもいいかい?」

一応社員寮もあるし、仕事やれば給料も出るよと彼は続けた。

それはありがたい。
この世界に、住む場所もなにもないからね。さらに、頼れる人たちも彼らしかいない。

「は、はい。……あの、聞いておきたいのですが、武装探偵社って一体どんなお仕事を?」

武装ってどういうことでしょうね……

「軍や警察に頼れない危険な依頼がやってくるのさ。」

与謝野さんが教えてくれました。

「なるほど……、頑張ります。」

なんとか、寝床と職を手に入れることができました。
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