短編

□もう振り返らない
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「あれあれ?寝坊助さんは健在ですな〜」

今一番聞きたくない声が頭上で聞こえた。

「なに。」
「職員室行かないの?」
「、、、」
「無視かい。そんな寝坊助さんにプレゼント。手出して。」
「なにこれ。」
「眠気覚ましのガムだよ。懐かしいっしょ。」

そういって渡されたガムは当時と同じもので私は思わず涙ぐみそうになった。
どうしてこの人は私をほっといてくれないのだろう。嬉しさと切なさが同時に込み上げまたため息を吐いてしまった。

「飛鳥ちゃんのため息も健在だね〜。高校の頃が懐かしいね。飛鳥ちゃんと席隣だったのって高3の1学期だったよね。今だから言うけどあの時飛鳥ちゃんのこと好きだったんだ。」

この人はなにを言っているのだ。私は頭の整理がつかなかった。その後のニックネームの言葉はほとんど覚えていない。

「じゃあ、みんなのとこ行こっか。」

そういってニックネームは席を立って教室のドアから出ようとした。

「、、しも。」
「え?もう一回言って?」
「私もあの時好きだったんだよ。バカ。」

ニックネームは驚いた表情をし、そこから穏やかな笑顔へ変わりこちらを見た。

「いくちゃんには内緒だよ。」

そういって私たちは手を繋ぎ職員室へ行った。

同窓会の会場へ向かうため私たちは学校を後にした。

私はニックネームへの思いにサヨナラを告げた。
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