短編

□もう振り返らない
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高校を卒業して初めての同窓会。
その前に当時のクラスメイトで高校へ行くことにした。

「うわ〜久しぶりだね!私ここの席だったな〜。」
「かずみんそこやったなあ〜!ななは一番前やからここやな。」
「なぁちゃんは絵を描くか居眠りするかでよく怒られてたよね。」
「いくちゃんこそ常に早弁して怒られてたやん!」

高山、西野、生田の仲良しグループは昔の思い出話に花が咲き、久しぶりに会ったというのにブランクを一切見せないほどの盛り上がり振りである。

私は当時から仲の良い橋本奈々未と教室の隅で皆の様子を眺めていた。
こうして久しぶりに学校へ来ると懐かしいいろいろな思いがぐっと込み上げてくる。
嫌いだった数学の時間はひたすら寝ていたこと。それを隣の席だったあいつがいつも邪魔をしてきたこと。眠気覚ましと言っていつもガムをくれたこと。寝ている最中に先生に当てられ焦っているとさりげなくノートを見せてくれたこと。


あいつのことが好きだったこと。


「あれ、いくちゃん。ニックネームは今日来ないの?」
「今バイト中だって。同窓会には間に合うと思うよ。」
「そうなんや〜。いくちゃん、ニックネームとは順調?」
「そうだね〜。安定って感じかな!来年から一緒に住むんだ。」
「すごいなぁ。ほんま羨ましいわ。」

卒業式の日にあいつがいくちゃんへ告白をし、付き合ったこと。

そんないろんな思い出を回想していると、

「おまたせー。バイト早く切り上げてきた!おっみんないるね!懐かしいな!」
「ニックネーム久しぶりー!変わらないね!今ちょうどニックネームの話ししてたとこなんだよ。」
「いや恥ずかしいよ。絵梨花変なこと言ってないよな?」
「さぁ?どうでしょう?」
「おい。」
「お二人さん。イチャイチャするのはお家でしてくださーい。」
「ななみ。相変わらず刺々しいね、、」
「職員室行かない?先生に挨拶しに行こうよ。」
「「「「賛成!!」」」」


そんなななみの一言に私は救われた。
ななみはこっちを向いて頭を撫でてくれた。

「別に嫉妬なんかしてないし。どんだけ引きずってるんだよ私。」
「まぁ、同窓会ってそんなもんだよ。行こ。」
「そうだね。私はちょっとしてから行くよ。」
「わかった。先行くね。」

みんなと同じテンションで職員室へ行ける気がしなかったのでしばらく教室へ残ることにした。1人になった教室で吐いたため息はとても教室に響き渡った。あらためてまだニックネームのことが気になっていることを実感し、やるせない思いが教室に充満して行く。私は当時を思い出すように机に突っ伏した。
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