絶賛の唇

□細胞の住人
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月明かりがカーテン越しに二人の部屋を照らす。

ベッドの上、白んだ光をドンヘのなめらかな背中が受け止めて、暗闇で無防備に寝ているヒョクの少し開いた唇にキスをする。

起こさないように軽く触れたキス。
ー欲しい。
物足りなさから間際まで近づいた唇で、ヒョクの規則正しい呼吸を、自分の肺へ流し込む。

自身のものとは違う香りが匂いが、ドンヘの鼻と口を占領する。
ヒョクの香りと交わって、まるで別物にでもなったような唾液を飲み込む。
繊細で秘密めいた交わりに、ドンヘの呼吸は小刻みに震えた。

開いた口から見える前歯に触れたくて、ヒョクの顔をじっと見据えたまま、自身の前歯の裏をゆるりと舐める。
溢れる唾液をまた飲み込んだ。

ベッドに落としていた右手をヒョクの鎖骨へ近づけると、触れないよう浮かせた指先で鎖骨の凹凸を確かめた。
こわばった手は柔らかなシルクで隠されたヒョクの胸元へ影を落とす。
起こさないように。
そっと落とした手のひらに小さく隆起したものを感じて、ドンヘの息はさらに荒くなった。

起こさないように。
背徳の月明かりを背負いながら、荒ぶる波を一人で抑え、柔らかなシルクに身を包んだヒョクに寄り添って瞼を閉じた。


「ヒョクは俺の空気だよ。いないと息ができない。」

ヒョクは答えない。

「ヒョクがおじいさんになっても、俺のことわからなくなっても、俺はずっと世話をするよ」

ーだから、俺より先に死なないで。

ヒョクは俺の血で肉で骨なんだ。
ヒョクがいないと俺はダメなんだ。

先にいってはダメだ。

美しい景色も、美味しい食事も、優しい雨も、隣に君がいないと心がなくなるようだ。

今はただ、起きている間だけは強く手を握らせて。
そのぬくもりを確かめさせて。

END
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