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□『逃げる』
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『逃げる』





「はぁっ、はぁ、っ、はぁ」


うっす、ランディです

あ?なんではぁはぁ言ってんのかって?
………それ聞いちゃう?

あの、只今…





























絶賛逃走中だからだよ!!!

別に興奮してはぁはぁ言ってる訳じゃねぇから
わかって

何から逃げてるか?

おいおい、それわかってて聞いてるだろ?
わかんない?

…ったく、しょうがねぇな…
教えてやる

ここが何処だかわかるか?
うん、そう

ヘルサレムズ・ロットだ

ここまで言えば気づくだろ

あれだよ

ライブラのボスだ

ミスターとかSSだと思った?

ミスターなら逃げる前に捕まる
SSは逃げるまでもない。倒す

なんで追われてる?

それがわかったら逃げてねぇ(多分)

つかなんで俺逃げてんの?
別にあっちから追われた訳でも、俺が何かしたわけでもねぇのに………

………………………いや、したな

したっていうか、逃げた

あの、街をぶらぶら歩ってたんだ
そしたらボスに会っちゃってさ

気づいたら逃げてたわ

別によくね?
俺のトラウマになった原因を思い出させるような存在だぜ?
逃げたくもなるさ

けど、逃げたまでは良かった(良いのかわかんねぇけど)

ある程度走って落ち着いたんだよ
悪いことしたかなぁって思ったけど、まぁ会わなきゃいいんだし!なんてまた歩き出したんだ

次の瞬間心臓止まったんじゃねぇかってくらいビックリした

追いかけて来てたみたいなんだ

ボスが

どこ行こうかなぁって呑気に考えてたとき、肩にぽんって叩かれるというか、何かが置かれたから振り返ったよ

落とし物か?なんて思って

すごく後悔した

振り向いた目線の先にあったのはワインレッド色のネクタイ

見覚えのあるそれに、冷や汗をかきながら顔をあげたらそこには…

息一つ乱さないで、汗もかかずに涼しい顔。眼鏡越しで俺を見つめるエメラルドグリーンの目の持ち主

そう





ボスでした

そのときの俺の頭ん中は相当ヤバかった

なんで、とかどうして、とか。
そんな感じの言葉しか浮かばなかった

え、俺ダッシュして結構走ったんだけどな
逃げてからそんな時間も経ってない

けどボスは今目の前にいる

走ったときの体温が上がった名残があるのか、現実離れしたこの状況にビックリしているのか、顔に熱が集まってる気がして、

また逃げた

それが今の俺です!


「っもう!なんで、追っかけて、来るかなぁ!?」


……ってあれ?後ろからボスが追ってきてるはずなのに、足音がしない

変だな、と思って振り向いてみたら

誰もいなかった

そりゃ、街を歩ってる人や異界人はいるけど、あの目立つ男はいなかった


「はぁ、はぁ……撒いた?」


今度こそ撒いたか。良かった

安心したらどっと疲れが出てきた
走ってるときは感じなかったのにな
アドレナリンすげぇ

…おっとぉ、ここで油断はダメだな
さっきもこうやって捕まったんだ

ちょっと路地裏に隠れながら移動するか
これなら簡単に見つかんないだろ

そう思って、俺は路地裏に入った



▽ ▲



「………」

「ランディ」


泣いていいかな

え?なんでって…わかってんだろぉぉおお!!!

そーですよそーですよっ!
見つかりましたよ!

もう逃げらんねぇよ

だってここ路地裏だぜ?

道迷うわ

んでその間に捕まるわ

…いや、迷わなくても捕まったけどね!!


「ふにゅぅぅ……」

「ランディ!?大丈夫か?」


色々脱力しきって重力に逆らわず、地面に座り込んだ俺を心配してくれてるらしい
ならその優しさを使って俺を見逃してくれよ…


「………なんかよう?」

「?いや、特に無いのだが」

「えぇ!?ないの!」


無いのに俺を追いかけて…


「うむ」

「じゃぁなんで、」

「追いかけたのか」

「!…ん」


一番気になっていたことを言ってくれたから、素直に首を縦にふる
なんだ………自覚あったのか……


「理由はいたって単純だ」

「なっ、なに?」

「─────逃げられたら、追いたくなるのが人というものだろう?」


数時間前の俺へ

マジで恨む


おまけ

「つか、何で路地裏に…」
「途中でランディを見失ってしまい、ビルの上から探していたら、路地裏に入っていくのが見えたのだ」
「あぁ…そぅ……」

ビルの上からって…どんな視力してんだよ

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