Hero’s

□プロローグ(仮)
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▼学校帰りの通学路


「あーあ、もうそろそろ卒業だなー 高校どーするよ?」

「別に 入れればどこでもいい」

「わたしもー」


学生服に身を包む3人
卒業、高校という単語を聞くに、中学校3年生のようだ

前に1人、後ろに2人が並んで歩いている

前にいる銀髪坊主の少年は、後ろの2人の方を向きながら器用に歩いている


「再生はどこに入りたいの?」

「よくぞ聞いてくれた!」


突然大声を出し、歩みを止める
それにつられて2人も立ち止まる

再生と呼ばれた銀髪坊主の少年──停止再生は、腰に手を当て胸を張り、言い放った


「俺は雄英一択!それ以外の選択肢はない!!」


決まった、とばかりにどや顔をする


「ヒーローになりたいの?」

「ふっふっふ、それは愚問だな一ノ瀬!」

「すごい!愚問って言葉覚えたんだね!」

「えっ!感激するとこそこ!?」


後ろを歩いていた1人が驚きの声をあげる
一ノ瀬瞬、白い髪にアシンメトリーの前髪が特徴の少女だ


「おい、止まってんな早く歩け」

「スルー!?俺の一世一代の発表をスルー!?」


再生の呼び掛けにも応じず、早く歩けと催促している黒髪のオールバックの少年の名前は名無し名無し
瞬と並んで後ろを歩いていた1人である


「どーでもいーから前向いて歩けよ ぶっ飛ばすぞ」

「こわっ!ねぇ聞いた一ノ瀬!今ちっちゃい声でぶっ飛ばすぞって…!」

「はいはいどーでもいーから歩こうねー」

「わっ、お、押すなよ!歩くから!」


んだよ2人とも…つめてぇなぁ…と、しぶしぶ前を向き歩き出した再生
それに続き2人も歩き出す


「けど雄英ってかなり偏差値高いはずだよね 再生入れんのー?」

「もち!つーか、ぜってー入る!」

「馬鹿だから無理だろ」

「聞こえたぞ名無し!俺って結構地獄耳なんだからな!」


バッ!と、名無しの方を向く


「……地獄耳って言葉知ってたのか…」

「それさっきも聞いた! くっそー!!2人して馬鹿にしやがってー!」


うおぉぉお!!と叫びながら走り去った再生に、2人は特に気にもせず歩くのを再開した

どうせこの先には交差点がある、そこで再生は足止めをくらっているだろう、名無しは予想していた


▼交差点


「……やっぱり」


名無しが呟いた言葉に、ふふっと瞬が笑い、再生の方へ駆け出した

再生は運が悪い、というかタイミングが悪い
偶然とはいえ、告白している最中に居合わせたり(ちなみに告白していたのは女子の方だったが、その女子は再生が好意を寄せていた女子だった)、曲がり角では必ず誰かとぶつかったり、購買で最後のひとつのパンに手を伸ばしたが横から伸びてきた手に取られたり(犯人は名無しだったが)…
地味にタイミングが悪いのだ

今回は交差点
走って来たはいいものの、タイミングの悪さが力を発揮し、青信号から赤信号に変わった直後だったそうだ(後日談)


「どーんまい!」

「……自分の体質がつらい」

「これが個性じゃないって逆にすごいよ!誇っていいくらい」

「誇れるかこんなもん!」

「個性使えばいいのにー」

「あ!その手が!って息止めたまま走れるか!」

「何のために水泳やってきたんだよ」

「そうだった…!」


再生の個性はタイミングの悪さではない
息を止めている間だけ時間が止まるというものだ

再生が息を止めれば、空を飛んでいる鳥も、うるさいエンジン音を出して走る車も、蜘蛛の子を散らしたように忙しなく動く人も、時間も全てが止まる

色んな音が鳴り響く現代にうんざりしている名無しは、この個性が羨ましかった

しかし息を止めている間だけなので、再生が息をし始めたら止まっていたもの達が一斉に動き出す

この個性を活かすために再生は、個性が発覚した4歳から水泳を始めた
今でも続けており、余裕で5分は止めれるようになった


「そんな頭で雄英大丈夫?」

「個性でカバーする!」

「筆記もあるだろ」

「それは名無しに教えてもらう!」

「え、やだ」

「即答!」


そこを何とか!と叫ぶ再生を無視し、信号に目を向ける
赤信号が点滅しているのを確認した名無しは、自分に引っ付いている再生と一瞬で距離を置いた
再生が、ひどい…!なんて言葉を投げ掛けるが名無しは無視して信号を見る


「ほら、信号変わった」

「再生の個性(タイミングの悪さ)が出る前に渡っちゃお!」

「個性じゃねぇって!」


ようやく変わった信号に、3人が交差点を渡ろうとしたその時───



ドォォ…ン!



雷でも落ちたかのような音が響いた
辺りの人は何事かとざわつき始める
しかし3人は、話に夢中で周囲が騒いでいるのが目に入っていない
のんびり交差点を歩いている


「けど、もしも雄英に落ちちゃったらどーするの?」

「もしもなんて言葉は俺の辞書にはない!」

「まず辞書がないんだろ」

「名無しくぅん?今なんつったかなぁ?」

「ばーか」

「さっきと違う!むしろひどくなってる!」

「さーせん」

「このやろっ」

「きゃー暴力はんたーい」

「そんな棒読みで言っても無駄だ!」


再生が名無しに突っ掛かっていると再び───



ドォォオン!



先程よりも大きい音に周囲のざわつきがひどくなる
非難したほうがいい?警察呼んだほうが…!ヒーローの到着を待てって!など言葉が飛び交う中、呑気な声があがる


「早くはやく!信号変わっちゃう!」


周囲は自身の安否を心配しているのに対し、いつの間にか渡りきっていた瞬は信号が変わってしまうことを心配していた

信号が変わったとしても、正体不明の音に気をとられ、走っていた車が次々と止まっているのだ
青から赤に変わっても車が走り出すことはないだろう


「まじか!行くぞ名無し!ってあれぇぇえ!?」

「早くはやくー信号変わっちゃうー」

「お前らまじ覚えてろよ!」


さっきまで再生の後ろにいたはずの名無しが、すでに渡りきっていた瞬の隣にいるのだ
再生は2人のもとへ走った


「ちくしょうお前らグルかよ!お前ら2人そろったら俺勝ち目ねぇじゃん!」

「まぁ1人でも勝ち目ないよね」

「まぁな!」

「誉めてないからね?」

「ほら、帰るぞ」

「あ!今日ヒーローの特番があんだった!急ぐぞ!」


そう言って走り出した再生の後を、名無しと瞬は歩いていく

相変わらず周囲はざわついたままだ
いまだ不安に包まれている中、ついに正体不明の音の正体が明らかになった



ドォォォオオン!!



けたたましい音と共に現れたのは四角い物体
5メートルくらいはあるだろうそれは次の瞬間、プシューという音たて、開いた

開いたそれから出てきたものに、先程のざわつきとは比べ物にならない叫びが飛び交う


「敵だぁー!!!」
「逃げろ!!!」
「おい邪魔だっ!!」
「ヒーローは!?まだ気付いてないのか!!」


逃げ惑う人々
敵と騒がれているもの───少年たちが一度は夢見るであろう玩具

ロボットだった

しかし、その姿を見て歓喜するものはいない
それほど恐ろしい見た目なのだ


「おーい!」

「あ、再生どーしたの」

「いやー、俺としたことが…」

「何?」

「ヒーロー特番、録画してたから急ぐ必要無かったわ」

「そーなんだ!馬鹿だね!」

「そーだね」

「そーだねってなんだ!」


敵が出現したにも関わらず、3人は呑気に会話をしている
再生は敵と遭遇することは無かったというのに
タイミングの悪さが出たようだ

敵が動き始めたらしく叫び声は大きくなる
ヒーローは来ていない
人々は絶望していた


「今日やる特番さー、オールマイトが出んだよ!」

「へー」

「へー」

「興味を持て!オールマイトだぞ!?平和の象徴だぞ!?」


その場に止まり話をしている3人に、ついに敵が気付いた
機械特有の音を出しながら迫っていく
ロボットが3人の背後に着いた
そして腕を振り上げ、3人目掛けて降り下ろした

キャー!!、女性の叫び声
一部始終を見ていた近くの人々は硬直している

バラバラになった






















































ロボットの残骸を見て

ようやく到着した警察とヒーローは困惑していた
何故もっと早く助けに来なかったのか、それでもヒーローか、などの怒号が浴びせられているせいではない

俺見たんだ、私も見た、一瞬で消えた、一瞬だった、といった意味不明なことを言ってくるからだ

何を見たのか、何が一瞬だったのか
このままでは埒があかないと、警察はその現場にいた数名を呼び、話を聞くことにした


「一瞬でした 敵の存在に気付いてない3人の学生がいて、その人たち目掛けて敵が腕を降り下ろしたんです!砂ぼこりが立ち込めていましたが、俺は確実に見ました!1人が敵に向かって手を伸ばしたと思ったら敵がふっ飛んだんです!! 敵の残骸に目を取られ、再び3人の方へ視線を戻しましたが、そこには誰もいませんでした… しかし何故到着が遅れたのです?他にもこの近くで同じ被害がありましたよね そちらにはヒーローが…」(以下略)

────────
────


「人もいっぱいいたし、良く見えへんかったんですけど…敵が飛ばされたとき、みんなは敵を目で追ってたんです せやけど私、その子たちの方をずっと見てたんです そして誰かが指をぱちんって鳴らしたら一瞬で消えました!」

────────
────


「ぼっ、僕、偶然その人たちのそばにいたんてす 敵が腕を降り下ろした風圧で転びそうになったんですけど… 気付いたらさっきの場所より少し離れた所にいました 僕とその人たちがいた場所はガレキで埋め尽くされてて… いつの間にか敵は倒されてるし、その人たちはいないし…本当に一瞬でした! ぁ…で、でも、僕が転びそうになったとき、誰かが、時間を止めるぞって言ってました!もしかしたら時間を止める個性かもしれないだとしたらどのくらい止められるんだ止まるのは近くの時間だけそれとも……」(ブツブツ)


それぞれの証言に共通して出てくる言葉は、3人の学生、一瞬、その3人のものと思われる個性
つまり敵を倒したのは、たった3人だけの学生

初めに眼鏡の少年が言っていたように、同じ被害が近くにも起こっていた
そこにはすでにヒーローが到着し、戦闘を繰り広げていたが、いずれも苦戦していた
そのためこちらに来るのが遅れたのだ

ようやく到着したと思いきや、敵はバラバラに分解されていた
ヒーローでも苦戦した敵を、たった3人で…しかも学生ときた

将来が楽しみだ、と、金髪の屈強な男が笑った



▼あとがき
ヒロアカの長編を書くとしたらこんな感じで始めたいなぁと、ひそかに考えていました。
ちなみに、この3人のことを証言していたのは、上から飯田くん、麗日さん、出久くんです。どうしたらそれっぽい話し方になるか試行錯誤しながら書いていました。
到着した警察とヒーローは、塚内警部とオールマイトです。
原作沿いではありませんが、どうぞよろしくお願いします。



▼備考
主人公たちは出久たちと同い年
この事件はヘドロ事件より前の話
出久たちは主人公たちをあまり良く見えていなかったためどんな人かわからない
主人公たちは騒ぎに気付いていないんじゃなくて無視しているだけ(地獄耳の再生が気付かないわけがない)
何らかの拍子で個性がバレて、「あの時の!?」ってなる
そして雄英に入ってない2人に猛アタックするオールマイトがいる



▼おまけ
再生が時間を止めた後の3人(会話文のみ)



「あちゃー 結構たくさんの人に見られちゃったね」

「みんな敵の方向いてるから大丈夫だ」

「うんうん」(訳:うんうん)

「この子も運がないねぇ 再生みたい」

「ん゛ぅ!?」(訳:はぁ!?)

「こいつも特番見る予定だったんだろ」

「オールマイト見逃しちゃう!!って叫んでたもんね 本当タイミング悪すぎ まんま再生じゃん」

「ん゛っふー!」(訳:うっせー!)

「ここまで似てたら兄弟みたいたいなもんでしょ 安全なとこに非難させてあげたら?」

「ん」(訳:ん)

「再生、解いていいぞ」

「んっんー!」(訳:おっけー!)

「よし解いたね! はい瞬間移動しまーす」(ぱちん)

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