Red Swan

□初陣。
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目の前にそびえ立つ高い高い50mの壁。

沿道の民衆。

風に吹かれてはためく自由の翼。

私たちの初陣となる壁外調査が、目前に迫っている。


『また壁外に行くのか…』

『どうせまた沢山死んで帰ってくるんだろ。』

『それで成果がないんじゃただの金食い虫だ。』

『俺達が出した税金だってのに。』

『いつになったらウォールマリア奪還出来るんだい?』

民衆の一部から調査兵団への野次が飛び交う。

壁外調査出立の時や帰還の時に民衆から心無い言葉を投げかけられるとは聞いていたがここまでズケズケと言ってくるとは思っていなかった。


調査兵団は人類のために自分の命を賭して戦っているのだ。
自分たちは壁の中で安全に暮らして居るくせによくそんなこと言えたものだ。

『エルヴィン団長ー!巨人を絶滅させて来てくれー!!』

『見ろ!!!リヴァイ兵士長だ!!1人で一個旅団並の戦力があるってよ!!』

『その隣にいるのはルーナ分隊長だ!リヴァイ兵士長と息ぴったりの攻撃で巨人を仕留めるんだってよ!!』

『あの金髪で大柄な人がミケ分隊長だ!!リヴァイ兵士長に次ぐ実力者だ!!』

『メガネをかけた人が巨人研究の第一人者だっていうハンジ分隊長だろう??巨人の生態から発生源まで幅広く研究しているらしい。』

『全員無事に帰ってきてくれよー!』

『調査兵団ー!人類の未来を頼んだぞー!!』


民衆の中からはそんな声も聞こえる。
非難ばかりではなく、幹部たちを賞賛したり、調査兵団を激励する声もあった事に安心すると同時に嬉しく思った。
民衆をぐるりと見回すと、見知った人物…
サラさんの姿を見つけた。

エルヴィン団長となにか一言二言交わした後、兵長、分隊長方とも言葉を交わすサラさん。
ルーナ分隊長が手を伸ばすと、サラさんも馬上のルーナ分隊長に向かって手を伸ばし、お互い右手の小指を絡ませて2、3度上下に振った。

指切りげんまんをするように。

お互いすこし微笑んで手を離すと、サラさんは民衆の最前列に引っ込む。

『付近の巨人は粗方片付けた!開門準備完了!』

壁の上から固定砲台で壁付近の巨人を攻撃していた駐屯兵団の兵士から合図がある。

いよいよだ。

『開門30秒前!!総員、出立準備!!!』

エルヴィン団長の言葉に、姿勢を正し、門を見つめる。

鈍い音と共に門がゆっくりと上がっていき、風が吹き抜ける。

『第33回壁外調査を開始する!!!総員、前進せよー!!!』

エルヴィン団長の号令と共に馬の腹を蹴り、壁外へと飛び出した。
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