綾薙学園

□美しい世界
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貴方が何よりも輝いてみえるのは、世界が実はあまり美しくないだけなのかもしれないし、貴方が世界の常識より遥かに美しすぎるだけなのかもしれない




「そんなの、後者に決まってるでしょ」




優雅な仕草でワイングラスを傾ける彼
思わず見入ってしまうほど美しいその人は信じられないことに私の恋人である
よく、恋をすると世界がキラキラ輝いてみえるって言うけど、あれは嘘だと思う
初めてりっちゃんに会った時から私の世界で彼より輝いているものなんてないことに気づいてしまった




「うん、そうだね
りっちゃんがあまりに美しすぎるから、私の世界が霞んでみえるのか」

「そんなに美しい世界をみていたいなら、黙って鏡でも見ていればいいじゃない」

「鏡?」




りっちゃんに促されるまま視界の隅にある大きな姿見に視線をやる
一目惚れして買った大きな姿見、確かに装飾も私の趣味にどストライクでほとんど衝動買いに近い形で買ったお気に入りの鏡だけど…




「鏡なんて見ても、別にどうってことないけど?」

「はぁ…、わかってないね
世界が霞んでみえるなら、世界で一番美しい君自身を見ていればいいじゃない」




そんなこともわからないの?というようにりっちゃんは私に言う
たまにりっちゃんは常人には理解しがたい思考をする




「世の中のみんながりっちゃんみたく自分が美しいって思ってるわけじゃないんだよ?」

「思ってるんじゃない、紛れもない事実だからね」




りっちゃんはそう言い隣に座る私を抱き寄せた




「紅が美しいのも、変えようのない事実だよ
僕と紅は、世界が霞んでみえるくらい美しい存在なんだ」

「りっちゃんも世界が霞んでみえるの?」

「僕のみている世界でその美しさがはっきりしているのは紅と遥斗だけさ」

「それもどうかと思うけど」




しなやかな筋肉を携えた腕に捕らえられ、あまりに美しい顔が至近距離に近づく
心臓が壊れそうなくらいドキドキする




「本当だよ?
だからこうして、手放せない
僕の可愛い可愛い天使をどこにも行かせたくないんだ」




ぎゅっと抱きしめられる
すごくすごく愛しくてどうにかなりそうだ
りっちゃんに、こんなに思われてるだけで幸せだよ
私もりっちゃんと同じくらい、ううん きっとそれ以上にりっちゃんのことが大好きだからどうにかして伝えたいけど、上手く言葉にできないから代わりに彼の体に腕を回す




「どこにも行くわけないよ」

「そうだね」




抱きしめられる温もりが、抱きしめる温もりが心地よくて離れがたくて、しばらく抱き合っていた




私の視界には、美しい世界が広がる
他の何も見えないくらいりっちゃんだけを見ているから



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