Treasure

□もう理性がぶっ飛びそう・・・
1ページ/2ページ

『もう理性がぶっ飛びそうだって知ってるか』



そんな格好で俺に会ったのがいけない。





――…なぁ、シャ−リ−、





部室に置いていた鞄がなくなったという。部員に借りたのか、シャ−リ−は水着の上にタオルを一枚羽織っているだけだった。よくそんな格好で校内を歩けたものだ、と思う。
「ちょっと…放してよルル、私鞄探してるの」
「だからって、そんな格好で俺に会ったのが悪い」
「そんな、ルルに会ったのは偶然じゃない」
壁に縫いとめて、身体を押し付けるように見下ろせば顔を紅くして背ける。
「……」
押さえつけるのをやめてシャ−リ−から離れた。
「?」
自分の読みが外れたからなのか、眉を寄せて俺の顔を見る。
「タオル一枚じゃ、風邪ひくだろ?」
「あ、ありがと…」
制服を脱いで着せてやれば、シャ−リ−は恥ずかしそうに顔を俯かせた。
「か、鞄さがしてくるね、制服は明日返すか、らっ」
俺の脇をすり抜けていこうとするから、腕を掴んで自分の方に寄せる。
「ルル!?」
「誰が離れていいって言った?」
俺の行動に困惑するシャ−リ−の背と膝裏に手を滑り込ませて横抱きにした。すると俺の腕の中で暴れ始める。
「や、ルルおろして!誰かに見られたら…!」
「大人しくしないならここでキスするけど、いい?」
そう言えば、むすりと頬を膨らませて俺の胸元に顔を押し付けた。大人しくなったのを確認して歩き始めると、どこに行くの、と顔を胸に埋めたまま訊く。声はすごく不機嫌そうだった。
「俺の部屋だけど…、服貸してほしくない?」
「ほしい」
声は不機嫌そうだったけれど、長く伸びた髪の隙間から見えている耳がほんのりと赤く染まっていたからただ照れているだけなのだと解る。
「ルル、ありがとう…」
「うん」
顔を隠すように必死でしがみつく君を見て不敵に笑ったのを君は、知らない。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ