ギアス部屋

□初々しい二人へ10題
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やさしく、あなたの手をひく。

大きくてあたたかい手を。


はなれたくない、はなれたくなくて。


もうお別れの時間なのはわかっているの。


・・・あなたが困った顔をしているのも。



でも、それでも。



「ユフィ・・・・・、皇女殿下。もう時間です」


スザクは、告げる。
スザクとユフィから騎士と皇女殿下へと戻るときを。


彼が切ない顔をしているのがわかり、手を握る力が強くなる。



「わかって、います。スザク・・・もう一度だけ、ユフィと呼んで?」


今日最後のお願い。

明日からはまた『皇女殿下』へと変わってしまうから。


考えたら、目頭が熱くなった。



「・・・・ユフィ」


ユーフェミアの小さな手を包み、やさしい声でスザクは呼ぶ。

それが更に私の胸を切なくして

思わず彼との距離を縮め、抱きついた。


スザクも抵抗せずに、ユーフェミアの背中に手を回す。

手は、握ったままで。


「また、会ってくださいね?」


「はい、もちろん」



見つめる。

きれいな彼の瞳を。



少しの沈黙の後に、スザクは顔をほんのり赤くしながらユーフェミアの頬にそっとキスをした。


「・・・・・それじゃあ、またね。ユフィ」


「はい・・・、スザク」



つないでいた手とぬくもりをゆっくり離し、身を翻してユーフェミアはドアの向こうへ消えていった。







ほんとうは。


ほんとうは口にしてほしかった。


手が触れ合うだけじゃ足りない。


頬へのキスじゃ、足りないんです。










「・・・いくじなし、です」




自分が歩いてきた道へ、その先にいるであろう彼に向かって、ぽつりとつぶやいた。




END....


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