マクロスF部屋2

□just one
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「ランカ、歌ってくれるか?お前の歌」


「…どうしよっかなあ」


「……お前、最近ちょっと強気だよな」


「ふふっ、冗談だよー。ごめんね?」


「いや…お前といるとさ、飽きないよ」


「…それって微妙、かも」


「え、なんでだよ」


「……もう、アルトくんって、結構鈍いよね……」


「……悪かったな」


拗ねて顔を背けるその姿すらかわいいと思えてしまう。仕方ない、すきなのだから。
笑いそうになるのを何とか堪えて、先程の彼のリクエストに応えるべく息を大きく吸った。


ふたりきりの丘に、ランカの歌声が響く。顔を背けていたアルトも、歌うランカの方へ振り返る。気持ち良さそうに歌う横顔に、顔を綻ばせた。
視線に気付いたランカは、歌ったままアルトに優しく微笑みかける。それはとても甘くて、優しくて、いとおしくて。


「……………っっ」

急激に全身が熱くなるのを感じた。照れとか嬉しさとかいとしさとか、すべてがアルトを襲って、その場にしゃがみ込まないようにするのがやっとだった。
目を見開いて、顔を真っ赤にするアルトを見て、ランカは驚いて歌うのを止めた。アルトと人二人分くらいあった距離を縮めて、心底心配そうな顔で覗き込む。


「アルトくん、大丈夫!?」


「…う、あ、いや、だ、大丈夫だから」


「でも、すっごく顔赤いよ!もしかして熱、あるの?」

ランカの小さくて細い手がアルトの額に伸びるのを、アルトの手が止めた。
掴まれた手がすごく熱くて、熱を帯びている。やっぱり体調が悪いのだとアルトの顔を見上げると、苦しそうな、バツの悪そうな、なんとも言えない表情を浮かべていた。


「……アルトくん?」


「……………ばかランカ」


「え?えっ?」


「…………ばーか」


「え、な、なんで…ひゃあっ」

理不尽にばかばかと言われることに反論しようとしたら、腕を強く引っ張られ気が付けば目の前にはアルトの胸があった。
わからないことが立て続けに起こり、もはや爆発寸前まできたランカの耳に、アルトの低い声が響く。


「……ランカ、」


「はっ、はい!?」


「……声裏返りすぎ、だろ。……くっ」


「わ、笑わないでよ!アルトくんのせいなのに…」


「元はと言えばランカのせい」


「え?なんで私なの…?」

少しの沈黙が二人の間におちる。言い淀んで、でも諦めたように、アルトは小さい掠れた声で告げた。



「……あんなふうに、笑うから」


「あんなふうに、わらう……??」


クエスチョンマークを頭にたくさん浮かべて、ランカはますますわからないと首を捻る。
アルトは今更ながら赤い顔を見られたくなくて、顔を上げようとするランカの頭をがっしり掴んで、自分の胸に押し付けた。


「ふえっ……全然わかんないよ、アルトくん!」


「…いいよ、わからなくて」


「えー、もう、教えてくれないの?」


拗ねて膨れっ面になっているのが声だけでわかって、アルトは小さく笑う。それに気付いたランカはますます頬を膨らませた。



「くくっ……ごめんごめん、怒ってるよな?」


「だって、全然わかんないし、アルトくんさっきまで苦しそうだったのに、今はすっごく楽しそうだし」

いじわるだよ、とお決まりの台詞を呟いて、ランカは顔をアルトの胸に押し付けて黙りこくってしまった。


これはちょっとやりすぎたかと反省する。でも、かっこいいと思われたいアルトとしては、ランカのかわいらしい笑顔だけで倒れ込みそうなくらいときめいて、苦しくなってどうしようもない自分は見られたくない。
でもそれでも本音を言いたくなるのは、ランカの成せる技なのか、惚れた弱みなのか、はたまた両方か。




「…さっき歌ってる時に笑ったランカの顔、俺のことがすきだって書いてあった」



自惚れのような台詞は図星だったらしく、どうしてわかったのと泣きそうになりながら必死に訴えるランカがかわいくてついにアルトはその細い身体を抱きしめた。

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