マクロスF部屋2
□ハチミツモーニング
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夜が明けて、あたたかいひかりが、カーテンの隙間からこぼれてくる。
くるまっていたはずの掛け布団から肩がいつの間にか出ていて、寒くて引き寄せようとする。のに、身体が動かない。
まだあけたくなかった目をそっと開くと、そこには美しい顔の、青年。まだ慣れない光景に、ランカは声を上げそうな自分の口に必死に力を込めた。
抱きしめられているから、動けないんだ。思い至ったのは、少し冷静になれた3分後。
そんなにしなくてもどこにもいかないよ、と言いたくなるほど抱きしめる腕に力が籠っていて、とても動けそうにない。それもまた、うれしいことだ、とランカは小さく笑った。
「・・・・・っ、くしゅっ」
くしゃみが出てしまった後で思い出す、肩が出ていて寒かったことを。
どうしよう、とひとりおろおろしていると、ぐっすり眠っていたアルトの目が、ゆるゆると開いていく。
「・・・らんか?」
「あっ、ごめんね、アルトくん・・・起こしちゃった」
「・・・・・・んー」
ランカの謝罪は耳に入っていないらしい、彼女の翡翠の髪を引き寄せて、耳あたりでぐりぐりと自分の頭を摺り寄せる。
「ふふ、くすぐったいよー」
抗議にならない声で言うと、アルトも寝ぼけながらに小さく笑っているのがわかった。証拠に更にぐりぐり、と頭を摺り寄せてくる。
ランカは、この時間がこっそりお気に入りだ。理由はもちろん、今のアルト。
普段あまり甘えてこないアルトが、寝起きの時だけはものすごく甘えたになるのだ。それがなんだかかわいくて、甘えてくれるのがうれしくて。
朝ごはんを作るのが遅くなってしまうのがわかっていても、せっかく晴れたからお布団干したいな、と思っても、どうしてもこの時間を過ごしてしまう。
アルトに一度話したら、顔を真っ赤にして拗ねてしまったので、それ以降はランカの心に留めるところでおさまっていた。
「・・・ランカ、肩、出てる」
だからくしゃみしたのか、ごめんな、と、もうはっきりした口調で言い、布団をランカの肩にかけた。
ランカが楽しんでいる間に、アルトは覚醒してしまったらしい。それを残念に思ったが、目の前の優しい笑顔を見ていたら、そんな気持ちもどこかへ飛んでいった。
「大丈夫だよ、ありがとうアルトくん」
にこり、と笑って胸に飛び込めば、アルトの唇がランカのそれにそっと触れた。
「ランカ、おはよう」
「おはよう、アルトくん」
(こうして、あまくとろけるようなキスで、ふたりの一日ははじまるのです。)
END