マクロスF部屋2
□エイプリルフールなふたり
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「アルトくん……」
「ん?」
「突然なんだけど、じ、実はね私…婚約者がいるの」
「…………へえ、奇遇だな。実は俺にもいるんだ、婚約者」
「あ、そうなんだー……って、えええっ!?」
「今まで言いづらくて言えなかったんだけどな…」
「……そ、そっか。…………………っ」
「うわ、ばっ、ばか!泣くな!嘘だよ、嘘!!」
「ふぇ……っ、うそ?」
「…ったく、ランカ、今日何月何日だ?」
涙が溜まりに溜まった目の端を拭って、翡翠の髪を撫でて優しく問いかける。
ランカはといえば涙が弾けんばかりにぱちぱちと瞬きを繰り返し、少しして口を開いた。
「えっと、4月1日…………あっ」
「というか、先に嘘言ってきたのお前だろ?なのにひっかかるなんて………ぷっ」
「う、あ、もうっ、笑わないでよー!」
「………ふっ、くくく」
「うう、こんなにお腹抱えて笑ってるアルトくん珍しいよ…。でも、どうして嘘だってわかったの?私頑張ったのに」
「………ぶーーっ!あははははっ」
「ええっ、もう何!?アルトくんっ」
「…………っ、くっ、ぶふっ」
「……アルトくん?今日の晩御飯作らずに帰っちゃうよ?」
「………それは勘弁、だな。ランカが作る飯うまいから」
「………(その笑顔は反則だよ…)」
「おい、帰らないよな?ランカ」
「……どうしよっかなあ。それよりも、なんでわかったの?嘘ついてたこと」
「…………帰らないって言ったら教えてやるよ」
「……ふふっ、帰らないよ!だって、もっとアルトくんと…その、一緒にいたいもん」
「なっ!………っばか……」
「ばかじゃないもん、ほんとのことだもん。ねえ、私帰らないって言ったよ?」
「………(なんか悔しい)……お前の髪、浮いてたから。あと喋り方が緊張してた」
「ええー、頑張って練習したのに……」
「なかなかおもしろかったから、便乗してやった」
「もう、いじわるだよアルトくん…」
「よく言われる」
ぷっくりと頬を膨らませて拗ねているランカに手招きしたら、素直にこちらに駆け寄って来た。
ぎゅっと抱きしめると、甘えるように擦り寄ってきた。
「そろそろ、腹減ったな」
「…ごはん、作るね」
「ん」
翡翠に優しくキスを落とすと、赤くなった顔がこちらを見ていた。
「………ねえ、アルトくん…あとでね、一緒にお風呂入ろ?」
「………………っはあ!?なっなん…」
なんで、どうして、いきなりそんな…いや大歓迎だけれども………違う!!
混乱した頭に喜びと驚きがぐるぐるとせわしなくうごめいている。
爆弾発言した当のランカの表情は、下を向いていてまったく見えない。
「…アルトくん、嘘だよっ」
「………はい?」
「さっきのお返しだよ!じゃあ、ごはん作ってくるね」
つい数秒前まで様子が伺えなかったランカは、突然顔を上げてにこりと笑い、すっぱりと言い放った。
アルトから離れ、壁にかかっているエプロンを取って台所へ颯爽と入って行った。心なしか、鼻歌も聞こえた気がした。
そんなのどこで覚えてきたんだとか、なんか笑顔がいつもと違って小悪魔だったとか、言いたいことはいろいろあるけれど……とりあえず。
「………嘘って、本当にしてもいいよな?」
*エ イ プ リ ル フ ー ル な ふ た り*