マクロスF部屋
□ラブリー・ベイベー
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愛機に乗り込むとすぐに目に飛び込んでくる、この空間には似つかわしくないかわいらしいマスコット人形。
有名なキャラクターのものではなく、アルトのよく知る人物。
彼の恋人である、翡翠色の髪の少女のマスコット人形。
何だか気恥ずかしくて、「いらない」などと突っぱねてしまったが、結局金髪の友人に押し切られるように貰ってしまったものだ。
捨てるだなんてできるわけがなく、いや実はむしろ欲しい。捨てるだなんてもっての他だ。
そんな思いで、勢いに任せて自分の愛機の隅に取り付けてしまったのだが。
そんな事を他人、特に金髪の友人やほっぺの赤い後輩に知られてしまったら。
きっとものすごい勢いで笑われて、からかわれるのだろう。
そして彼女の義兄である上司と、彼女の実兄に銀河の果てまで飛ばされる・・・確実に。
そんなのは御免だ、と頭を横に振り愛しい彼女のマスコットを手に取った。
本物の彼女が笑うように、かわいらしい微笑みを浮かべているそれを指で優しく撫でた。
今きっと仕事を頑張っているであろう彼女を思い浮かべながら、安全を祈りながらマスコットを自分の顔へと近づけた。
自分が仕事に行くと言って家を出た時の、彼女の心配そうな顔をふと思い出す。今すぐ抱きしめてやりたい衝動に襲われたが彼女は今ここにはいない。
彼女に届くかはわからないが、マスコットに託すだけでも少しは気持ちが和らぐから。
「・・・・・ランカ、行ってくる」
誰もいるわけがないのだが、周りをきょろきょろと見回した。
少し大袈裟に咳払いをし、マスコットに小さく音を立てて唇を落とす。
自分の心を落ち着かせる為とはいえ、恥ずかしすぎる行為にアルトは赤面しうなだれた。
「・・・・・・・あー、えーっと、アルト姫?お取り込み中の所悪いんだけど」
「っ何だよ!こんな時にっ・・・・・・・・・・・・・!?」
突然聞こえてきたミハエルの声に咄嗟に返事をしたものの、ふと芽生えた疑問に続くはずの言葉が途切れる。
お取り込み中・・・?ミハエル達には今の自分の言っていたことや行動が知られていないはずだ。通信はOFFになっているのだから。
混乱しながらも浮かび上がった疑問を解決する前に、またミハエルの声が聞こえてくる。