マクロスF部屋
□光の中へ
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「・・・アルトくん」
「ん?」
「・・・・・・くっ、苦しい・・・・」
「こんぐらい平気だろ、ランカだし」
「もう・・・何それ」
さっきから、アルトくんは私を抱きしめたまま離してくれない。結構強い力だから正直苦しかったりする。
こんなの、初めてだった。お兄ちゃんには抱きしめられたことはあった。でもそれとは違う。
アルトくんは「おとこのひと」なのだから。
どきどきと鼓動がなりやまない。どうしよう・・・・
困った。こういうときどうしたらいいの?混乱した頭で考える。
混乱した頭は状況を何とか理解してくれた。どう考えても彼の様子がおかしい。それに気付き、心が落ち着いた。それと同時に、心配な気持ちがこみ上げる。
「どうしたの・・・?」
何かあったの?怖い夢でも見たの?
お母さんのように、子供をあやすように囁く。優しく、あったかい海の中にいるかのような。
アルトは、ランカの問いかけにびくりと体を震わせ、抱きしめる力を強くした。
「・・・お前がいなくなる・・・・気がして・・・・・」
夢をみた。
誰かがランカを連れて行く夢
ランカは泣きながら笑って「さよなら」って言うんだ。
俺はそれを止められなくて。
ランカの名前を叫んで、旅立っていく光を見つめているしかなくて。
その時やっと、俺はランカの大切さに気付いて。
好きなんだ、と心の中で呟き落胆するんだ。
「アルトくん、私、ここにいるよ」
凛とした、透き通るやわらかな声。
アルトの頭を撫でながら、すうっと息を吸った。
アルトの耳に入るのは、彼の大好きな歌。
彼女の唯一の思い出の歌。
その温かさと優しさと心地よさに
涙が溢れて止まらなかった
「・・・っ・・・くっ・・・・」
ああ、彼女はここにいるのに
歌で、温もりで、掌で
伝えてくれているのに
何でこんなにも不安になる?
答えは、考えても考えても見つからなかった。