マクロスF部屋
□ファーストキス
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「カーット!」
ディレクターの言葉に少し遅れて、アルトとランカはほぼ同時に水中から顔を出した。
「二人ともお疲れ様!編集するから休んでてくださいね」
「はーい」
小さく返事をしたランカは、まださっきの事で頭が働かない様子だ。
返事をしたままぼーっとしているランカを見かねて、アルトは腕を引っ張り近くにある椅子まで連れて行く。
「っアルトく…!」
「水中の演技で疲れたんだろ、座って休め」
少し乱暴に言い、ランカを椅子に座らせて自分もその横に腰掛けた。
先程のキスが頭に残って、恥ずかしくて目を合わせることが出来ない。
そんな自分を不思議に思いながらも、横に座るランカにちらりと目線を向けた。
するとランカもこっちを見ていたらしく、目が合ってしまい顔を真っ赤にして逆を向いた。
ランカもりんごみたいに真っ赤だったな。
そう思ったらもっと顔が熱くなった。
どちらも言葉を発さず、沈黙が続く。
それに耐えられなくなったのか、ランカが正面を向いた。
「アルトくん、ありがとう」
「へ?」
ランカの突然の感謝の言葉に、アルトは驚き目を丸くした。
そんなアルトを小さく笑いながら、ランカは言葉を続けた。
「監督から、私のために映画に出てくれって頼まれたんだよね?結果的に何か…すごいことになっちゃったけど、私、アルトくんとだったからいいお芝居出来たんだと思うの」
「お前、それ知って…?」
「うん。さっき聞いたんだ。だから、引き受けてくれてありがとう」
ランカは話し終わるとアルトの方に向き直り、笑った。
その笑顔が妙に大人っぽくて、アルトは自分の心臓が高鳴るのがわかった。
綺麗だ、と素直に思ってしまった。
それを悟られまいと早口で答える。
「べ…つに、大した事じゃねぇよ」
「もぉ、そう言うと思った!」
おかしそうに声を上げて笑うランカと対照的に、アルトは自分の鼓動に戸惑い下を向いてしまう。
顔がどんどん熱くなっていくのがわかる。
ランカの方をしっかり見る事が出来ない。