頂き物・捧げ物
□空を舞う―・・・
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それはとても、美しい人だった。
街の巫女であるあの人は、幼いながらも自分を含む人々を魅了し、愛された人であった。
そしてまたあの人も、自分たちを愛してくれた。
柔らかそうな黒髪に、優しげな光をたたえる琥珀の瞳。
誰もがあの人に癒されていた。
あの人には不思議なチカラがあった。
伝説と呼ばれし魔獣を引き寄せるそのチカラは、きっと誰しもが望んだものだろう。
しかしどうだろうか。
あの人に寄り添う伝説と呼ばれる魔獣たちは、本の挿絵で見るより穏やかな顔を見せている。
自分は思った。
あの人でなければ、チカラは正しい方向にしか行かない、と。
それはきっと、他の人たちも思っていただろう。
そんな時だった。
あの人の“チカラ“を狙い、気の狂った者共が街を襲ってきたのは。
家々に火矢を放ち、逃げ惑う住人達を見境なく槍や剣で刺していく者共は、まっすぐあの人へと向かっていた。
自分は止めようとした。だけど、すぐ斬られ、地面に縫い付けられてしまった。
腹から赤い血がどくどくと流れていく。
ぼんやりとする視界に、襲撃者とあの人が映った。
襲撃者の手が、あの人に触れようとしている。
カラカラの喉から出した制止の声は、届いたのかどうか―わからない。
ただ一つわかったのは、もう終わりだということだけだった。