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□桜、舞え
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薄桃色の花弁が、空に上がった。
澄んだ青に映えるそれは不思議とすぐには地面に付かず、まるで離れたくないと言っているかのように幹や枝を周回する。
しかし、木はその願いに耳を傾けない。己の全てを自然の流れに任せるからだ。
願いもむなしく地面に落ちて土がついた花弁は、再び風にあおられて空へ上がった。
休日の昼間。定期報告を終えていつものように十番隊へ向かっていた一護は、向かう先から感じる極寒の霊圧に疑問を浮かべ、すぐに苦笑いをつくった。
・・
今日も、優秀な副官が仕事をほっぽってサボったらしい。
おかげで彼の霊圧は怒りに染まり、道行く隊員たちの心臓を悪くさせているだろう、と一護は考えた。
一護は軽く息をはくと、瞬歩を使って十番隊隊舎まで急いだ。
ちなみに今日は、冬獅郎の家に泊まる日だ。
少しでも長く愛しい人といたいというのは、全世界共通のカップルの願いだろう。
「…え、と…どういう状況…なんだ?」
「…見ての通りだ」