愛の警察
□神戸くんのフェロモン(芹缶)
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「おはようございますっ」
「はいおはよう」
あぁ、まただ…
ある日の朝、いつも通り1課に向かう俺――芹沢慶二の歩く廊下の先に、頬の蒸気した女の子と爽やかに返事をする神戸尊がいた。
神戸さんは男だけど綺麗で、色気がある。
とても紳士で、女の子にモテないわけがない。
そして、俺も…
「あっ、おはよう芹沢くん!」
「っおはようございます!」
彼に恋をしていた。
「どうしたの?何か浮かない顔だけど」
「…また女の子ナンパしてたんですかぁ?」
「えぇっ??酷いなぁ、挨拶してただけなのに〜」
にこにこと困ったように笑う神戸さん。
素敵だなぁ…ってそうじゃなくて!!
別に付き合ってるわけじゃないけど、好きになってしまった以上は欲がないわけじゃない。
俺だけを見ていてほしい。
挨拶だろうと、この人の笑顔は猫にまたたびあげてるようなものだ。
その笑顔が、俺だけに向いてくれたら…なんて考えてしまう。
「…神戸さんは酷いです…」
「んん?何のこと?」
「俺の方が…」
「え?」
あんな女の子たちなんかよりずっと、
「俺の方が神戸さんのこと好きです」
「…へっ…?」
……………あっ、えっ?
今…声に…出てたよねえええええ!!?
「あっ、待ってくださいっ!わ、忘れてっ、忘れてください!!!」
う、嘘だろ…想いを告げるならこんな警視庁の廊下なんかじゃなくて…もっとムードがあるところで…って、だからそうじゃなくて!
「ごめんなさいっ、俺っ…!!」
「…いや…あの、言い間違えとかかな?びっくりしたよ〜」
ずしりと胸に何かが落ちた。
いつもと変わらない神戸さんの笑顔は、俺に妙な焦燥感を与えた。
「あぁ、もうこんな時間だった!早く行かないと杉下さんに怒られちゃう…」
じゃあね、芹沢くんっ
手をひらりと振って、背中を向けようとした彼に思わず叫んだ。
「神戸さん!!!」
「わっ!?せ、芹沢くん?」
やっぱり、伝えないと駄目だ…!
「俺っ、さっきの言い間違えなんかじゃないです!!俺の本心です!あなたが…!好きなんです…っ!!」
年下だし、色気なんかないし、課も違うし、あなたに何も敵わないけど
「待っててください…!あんな女の子たちより、俺を見てくださいっ!!」
ぽかんと口を開けた神戸さん。
とても愛おしくて、もう何がなんだか分からなくて泣きそうだ。
神戸さんはようやくぱちりとまばたきをして、口を閉じた。
そしてゆっくりと口元に手を持っていき――――
ふにゃりと困ったように、また笑った。
「芹沢くん、ここ、廊下だよ?」
しーっとジェスチャーをして、目線がずれる。
俺ははっと我に返って周りを見渡した。
人は少ないにしろ、何人かがぽかんとしている。
「あっ!!す、すみませ―――っ」
俺がとっさに謝ろうとすると、
「でも、」
と神戸さんがまた口を開いた。
「少しだけなら…待とうかな」
目を細めて笑った。
彼のこの笑顔は、初めて見た。
絶対に、あなたを手に入れてみせる…!
「だから、」
フェロモン抑えて、待っててください。