____チュンチュン…
「ううん…もう朝か…」
ふわ、と欠伸をしながらベッドから起き上がる。時計を見てみると"7時39分"と書いてある。普通なら遅刻だが、今日は土曜日だ。そんな焦らなくて大丈夫だろう、と考え再びベッドに倒れようとした。
____コンコン。
「…起きてる?」
「…兄さん、?」
「入っても良い?」
「いいよ。」
ガチャリ、とドアノブを回し入って来たのは私の自慢である一期兄さんだった。
おはよう、と言いながら私の側に来て私の頭を撫でる。この大きな手が大好きだ。思わず兄の手にすりすりと猫の様に擦り付くと小さな笑みと共にぎゅ、抱き締めながら髪を梳くように撫でてくれる。
「よく起きられたね、偉い。」
「私だって子供じゃないし…」
「はは、そっか。」
何処か寂しそうに微笑む兄に胸がきゅぅぅ、と締め付けられる。
兄さん、と呼ぶ声は兄の声に遮られた。
「今日の予定、ちゃんと分かってる?」
「え、今日の予定…?…あ、兄さんと買い物だ!!」
「…忘れてた?」
「違う!大丈夫!!用意するから!!」
しょぼん、とする兄に慌てて着替えるというと下行ってるね、と微笑みながら私の部屋を出て行った。
早くしなきゃ、と自分のクローゼットを開けお気に入りのワンピースを取り出す。甘過ぎないふわふわとした生地で色は水色。兄っぽいなぁと思って買った奴。オフショルダーで少しセクシー。ワンピースに袖を通し、後ろでリボンを結んだ。鏡の前でくるりと回ってみる。うん。可愛い。髪の毛を結ぼうとドレッサーの近くに行くと見た事の無いヘアゴムがあった。
「…あれ?私、こんなの持ってたっけ?」
黄色寄りのクリーム色、というのが正しいのだろうか。大きくも小さくもない丁度良いサイズのリボンのヘアゴムがあった。ふんわりとしたオーガンジーリボンで今日の服に合いそうだ。細かい事は気にしなくていいや、とそのヘアゴムに髪を通し、耳の下で纏めた横結びにした。
「よし、これで平気。」
鏡の前でぐっ、とガッツポーズをし満足気に笑った。
バッグを持って、慌てて下に降りると兄がスマホを弄りながら玄関に立っていた。
「ごめん、兄さん!遅れた!!」
「大丈夫、気にしなくて良いよ。」
「よし!行こ!」
「うん、あんまり慌てなくて平気だよ?」
苦笑いを浮かべながら私の頭を軽くぽんぽん、と撫でる。ちゃんと髪の毛を崩さない様に。
今日の為に買っておいたパンプスに足を入れるとすかさず兄が私の事を支えてくれる。
ありがと、と言うと兄は嬉しそうな顔でどういたしまして、と言う。それが少し面白くて笑ってしまう。
「さて、じゃ行こうか!兄さん!」
「ヒール高いんだから気を付けるんだよ。」
心配そうに首を傾げる兄の腕に抱き着き、こうするから大丈夫!と言うと一瞬驚いた顔をしたが、すぐにいつもの物腰柔らかい微笑みを浮かべ、なら大丈夫か。と私に歩幅を合わせてくれる。
さぁ、何を買おうかな。と悩みながらショッピングセンターへ兄と2人で歩いて行った。
end.