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□☁ なんにも知らないふりをして
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トシのケータイが鳴った。
「だあれ?」
「あ?近藤さん」
一瞬、止まって、言う貴方。
「…そ。」
その時は特に気にもしてなかった。
だけど、やっぱり気になった。
「厠行ってくるわ、」
「行ってらっしゃい」
そう言って、だって、貴方ケータイ、置いていっちゃうんだもの。
しかもね、そのケータイ、鳴っちゃうんだもの。
みちゃった。
「 ( 何が、近藤さん よ )」
そこにあったのは女の子の名前。
数回重なっている着信履歴が嫌というほど、私を、締め付けた。
「( 毎日、電話、しているの? )」
私とはしてくれなくなっちゃったのに。
嫌に、なる。
そっと置いた。
貴方が来た。
「……早く来て」
なんにも知らないふりをした。
そんな何度目かの夜。