短編

□Black
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玲奈ちゃんから電話してきてくれたのはたった2回だけ

1回目は別れてと言ってきた時

そして2回目は別れてから
10年後の今日

もう2度とわたしの携帯に
玲奈ちゃんの番号が表示されることないと思っていた


「久しぶり」


「久しぶりだね。玲奈ちゃん」


「急に電話してごめんね」


「ううん。大丈夫だよ。」


「ありがとう。
あのね、わたし結婚することになったの」


なんとなくわかっていた

用事もなく電話する訳ないし


「そっか。
久しぶりにあの海見に行かない?」


「え・・・」


きっとわたしに会いたくないと思う

けどそんなことわかってても

会いたいんだ


「明日14時に海で待ってるから」


玲奈ちゃんからの返事も聞かずに電話切った。





30分前には海に着いた

10年振りにこの場所に来た

海開きもしてないから人なんて全然いない


「珠理奈久しぶりだね」


約束の5分前に玲奈ちゃんが来てくれた。
久しぶりに見る玲奈ちゃんは10年前よりもっと綺麗になっていた


「久しぶり
じゃあ、せっかくだし散歩でもしよ」


「・・・え」


玲奈ちゃんは驚いた表情で見てきた

そりゃそうだ

わたしが急に手繋いだらびっくりするよね


「今日だけだから」


玲奈ちゃんは嫌がらずそのままにしてくれた


「珠理奈が急に海誘うなんてびっくりしたよ」


手を繋ぐと赤面するところは変わらないんだ

なんか懐かしいな


「どうしても
玲奈ちゃんとまたここに来たかったんだ
無理に誘ってごめんね」


「ううん。
なんか懐かしいね
珠理奈とまたここに来れるなんて思わなかったな」


「やっぱり少し海くるのは早かったかな
少し寒いね。
自動販売機に飲み物買いに行こう」


無言でただ手を繋いで歩いているだけなのに
それがすごく心地良かった

玲奈ちゃんの顔見たら
微笑んでくれているから同じなのかな


「玲奈ちゃんはどれ飲む?」


「じゃあ、紅茶にしようかな」


「変わらないね。」


「珠理奈はコーヒーブラック飲めるんだ」


「昔は無理だったけど
今はもう飲めるよ」


「大人になったんだね」


「玲奈ちゃんブラック飲めるぐらいで
大人って言わないよ」


「ううん。
そうじゃないよ
昔の珠理奈だったら
『ブラック飲めるからもう大人だもん』って
言ってそうだから考えとか大人になったんだなって思ったの」


「全然わたし大人になれてないよ
海に行きたいってわがまま言ったのに」


「あー
確かにそれは子どもみたいだったな
電話急に切るもんね」


「じゃあ
もう一つ子どもみたいなこと言ってもいい?」


「良いよ」


「キスしてもいい?」


「え・・・」


「今日だけだから。
明日からはちゃんと友達に戻るから」


玲奈ちゃんの返事も待たずに
キスした

このまま時間が止まればいいのに

そしたら結婚おめでとうなんて言わなくて済むのに

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