記憶
□異能力者
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結局あれから眠ることはできずに、持ち帰ってきた仕事をこなした。
出勤時間が来る頃には仕事もひと段落し、本部に向かおうとしたときに首領から電話があった。
「首領、中原です。失礼します。」
「入り給え」
今日はいつもと違うな、エリス嬢の嫌がる声が聞こえねェ。珍しいこともあるもんだ。
まあそれはそれで平和でいいもんだ。
そう思いながら入室した。
「お早うございます、首領。」
「やあ、中原君。朝からすまないね、お早う」
「いえ、それで話というのは何でしょう。」
エリス嬢が居ねェってことは相当大事なことか。
「一つ、君に意見を求めようとおもってね。
3年前まで情報員の坂口安吾君がいただろう?彼が抜けた穴は以外にも大きくてねぇ。
正確無比な情報が以前よりも少なくなったんだよ。
ある程度は合ってる程度の情報ばかりでは、いつかうちの組織も襲撃を受けるかもしれないだろう?
そうなってからでは遅いからねぇ…。」
それは…
「我々の力不足です。すぐにでも対策を…」
首領のいうことは全くもってその通りだった。
確かにすべての情報が正確ではないし、嘘の情報に惑わされてる間に本部が襲撃をうけたらひとたまりもない。
「いや、ここからが本題なのだよ。
最近得た情報でね、他人の思考を読み取り、本当のことをいってるか判別できる異能力者がいるみたいなんだが、そのことについてどう思うかね?」
「!!!!!」
頭を鈍器で殴られた気分になった。
そんな異能力を持ったやつは1人しか知らねェ。
「首領、それは…。そいつはあの日、急に消えたんですよ。
死んだって噂さえされる始末でした。
実際あの状況じゃ、生きてるとは思えませんが…。」
そう、あいつはたしかにあの日。
「でもね、中原君。書面に出していない機密情報を盗まれたという噂は聞いているのだよ。
しかも全員が盗まれたと気づく前に、同じような背格好をした女性に接触してるんだ。
偶然にしては出来過ぎだとはおもわないかね?」