中学生

□恋愛モラトリアム
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空を見上げながら、私も自分に嘘をつかないように生きようと思った




「私ね、」




横に並んで空を見上げ、お互いの顔が見えないままに私は言葉を紡いだ




「雅治のことが、好き」




私が授業をサボる理由は、あなたと一緒にいたいから
私が長生きしたいのは、いつかあなたと結ばれたら人生の最後まで添い遂げたいから

雅治からの返答がないのは、ほんの一瞬だったかもしれないし
しばらく長い間だったかもしれない
時間の感覚が無くなって、空を流れる雲が止まった気がした




「蘭」




名前を呼ばれたかと思うと、目の前の空が真っ暗になり唇に温かく柔らかいものが触れた
雅治が私の上に覆いかぶさり、キスされたと気づいた時には、目の前には空を背景にした雅治の姿があった




「雅…治?」

「俺も、お前さんのことが好きじゃ」




整った顔が言う
あれ?目の前にいるはずの雅治が霞む
そっか、泣いてるんだ、私




「うそ…」

「嘘は言わん、本当じゃ
まさかお前さんから言われるとは思っとらんかった」




ふっと、笑みをこぼし私の涙をすくう雅治
その仕草があまりに優しくて心臓がはねる




「さっきの言葉、撤回じゃ
今 隕石に落ちてこられたら困る
俺も長生きしたくなったけんのう…もっとお前さんに触れていたい」

「うん…、私も」




もう一度キスが降ってくる
今度は不意打ちじゃなく、ちゃんと雅治の温もりを感じて




「蘭」

「んっ…雅治…」




熱い吐息が絡み合う、それしか知らないみたいに私たちはキスを繰り返した
こんなに幸せな瞬間、私は知らない
温かくて、優しくて、愛おしい…
頭の中がふやけていく、このまま溶けてしまいそうだ




「俺が授業をサボる理由、知りたいんじゃったのう」





キスの余韻を残したまま雅治は私の上から退き、横に座りなおした
私も上体を起こし隣に座るようにすると、雅治に抱き寄せられ体が密着する




「お前さんが来るからじゃ」

「え?そんなにいつもは来てないよ?」

「それでもじゃ、たまにこうしてお前さんが来て、しょうもない話をして」




私を抱く手が緩む、雅治の方を見ると視線がぶつかった
キリッとした目が私を熱っぽく見つめる




「それだけで満たされとった、その時間が心地よくてそのまま消えても悔いはないと思っとった」

「今は?」

「それだけじゃ満足できんようになった
蘭、おまんのせいぜよ
しっかりと責任取ってもらわんとのぅ」




自分でもどこかで期待をしていた
再び唇が重なり優しく寝かされる
雅治の手が器用に私の制服を乱していく
ボタンが1つ外されるたびに心臓の音がうるさくなる




「恥ずかしい…、こんな明るいところで…」

「最後まではしないぜよ、もっとちゃんと大事にするけんのぅ」




そう言うと雅治は私の首元に顔を埋めた
ふわふわの髪が頬を撫でてくすぐったい
くすぐったさと同時に、ピリッとした痛みがほとばしる
それは、小さくて幸せな痛み




「んっ…」




自分では見えないけど、確かに刻まれた雅治の証に心が踊った




「すまん、つい…、抑えきれんかった
こんなとこでシたりせんから」

「ううん、嬉しい…雅治に、愛されてるって感じるよ」

「…悪い子じゃ、そんな顔されたらガマンできんくなる」




それでも雅治は私をゆっくりと起こし、それ以上行為を続けはしなかった
最後に軽く触れるだけのキスをした




「もうサボる理由ないでしょ?
これからはちゃんと授業でようね?」

「それとこれとは別ぜよ」

「え、だってもうサボる理由ないでしょ?」

「さぁのぅ」




はぐらかす雅治
私はなんとなく察した
サボるのは、シンプルに授業が面倒くさいからに違いない




「嘘つき」

「嘘はついてないぜよ、
蘭と2人きりになるのもちゃんと狙っとったぜよ」

「 も ってことは。やっぱりただの面倒くさがりじゃん!!」

「…プリ」




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