中学生

□詐欺師
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「で、お前さんはどうしていつもこっから眺めとるんじゃ?」

「だからっ、それは…」




そうだった、私 てっきり柳生君だと思って変なこと言っちゃった
あぁ、今さらどう繕ってもうまく誤魔化せない
雅治の試すような視線が私を刺す、そんな表情されたら期待しちゃう…この想いを伝えてもいいの??




「私は…、雅治のこと…っ、その…」

「ほい、合格じゃ」




雅治はこちらに歩み寄りながらかつらを外した
まさに雅治の顔が目の前に迫ってきて細い骨ばった人差し指が私の唇に添えられる




「蘭、俺はお前が好きじゃ」

「ふぇ…?」




雅治はそう言って私の唇から指を離した
待って、雅治 今 私のこと好きって言った?言った?




「雅治…っ、私…」




好き、っていう簡単な2文字を伝えたいのに嬉しさが胸に込み上げてきてうまく言えない
目の前にある大好きな人の顔が歪む




「泣きなさんな、可愛い顔が台無しじゃ」




ふっ、と笑みをこぼし雅治は私の目から流れる雫を指で優しくすくう
なんで?なんでこんなに優しい手つきなの?しかもさらっと可愛いとか言うし
こんな雅治知らない、こんな幸せなんて知らないよ、どうしよう…おかしくなりそう




「雅治っ、私も…好き……」

「あぁ、知っとる」




雅治はくすっと笑い私の頭を優しく撫でた
あまりに優しいその手つきに止まっていた涙が再び溢れてくる




「お前さんは、そんなに泣き虫だったかのぅ」

「違う…、嬉しくて……涙が止まらないの」

「そうか」




そう言って私を抱きしめる雅治
うるさく鳴り続けてる心臓の音がそのまま聞こえてしまいそうでますます鼓動が加速する
そんな私を知ってか知らずかぎゅっと抱きしめる雅治




「お前さんの泣いてる顔もいいが、笑った顔の方が可愛いけんのぅ
ほら、笑いんしゃい」




覗き込むようにして優しく囁く雅治
今までそんな素振りなんて見せなかったくせに、想いが通じた途端にこんなに甘いなんてズルい
ますます好きになってしまう…




『詐欺師』




雅治の呼び名が頭をよぎった
初めてきいたときは、笑い飛ばしたけど
確かに雅治は、詐欺師なのかもしれない
色んな顔を持って私を翻弄する詐欺師
彼に惚れたら、もう戻れない




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