妖狐

□誕生日
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今年もこの日がやってきた
1月25日
玉藻先生の誕生日だ




最初はサプライズでお祝いもしていたけど
毎年しっかりお祝いしているからサプライズが通用しなくなった
だからサプライズとかそういうことをするのは諦めて面と向かってお祝いするようにしている




「玉藻先生、お誕生日おめでとう!!」




朝目覚めて1番に告げ、ぎゅっと抱きつく
初めて誕生日をお祝いしたとき玉藻先生は理解できないというような顔をしていた




『誕生日?人間はいちいち生まれた日を毎年祝うのですか?不思議です
と言ってもこの誕生日は「私」ではなくこの体の持ち主南雲明彦のものですが』




人間の私は誕生日を祝うことが当たり前だと思っていた
でも妖怪の玉藻先生は違う、そもそも誕生日なんて概念が無い
だから最初は苦労したな…




「毎年同じ日に祝われるというのも、悪くないですね」




玉藻先生ははにかむように言った
そんな表情あまりみせない人だから思わずドキドキしてしまう




「何度でも祝うよ、そして何度も感謝する
生まれてきてくれてありがとう
私と出会ってくれてありがとう
愛してくれてありがとう」




人間と妖怪で
生きる世界も刻む時間も全然違う私たち
そんな私たちがこうして抱き合える奇跡に感謝する日
だから、毎年欠かさずにお祝いするの

…死ぬまで、

私が、いつか死んでしまうまで
何度も何度も、玉藻先生が生まれたことを祝う
いつか、なんて明日くるかもしれないし何十年先かもしれない
いつくるかわからない「いつか」に怯えたりしない




「私からもお礼を言いますよ鏡花
生まれてきてくれてありがとうございます
こうして私と出会って、今こうして目の前にいる
そんなことがどれほど難しいことか…
来年もその先もとは言いません、今こうして目の前にいてくれるだけで十分です」

「玉藻…先生……」




同じことを考えてくれていたことが嬉しくて涙が出そうになる
でも、今日だけは絶対に泣かないよ
大事な日だもん、一日ずっと笑顔でいて目一杯お祝いするの




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