高校生

□相思相愛
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これほどまでに1人の女を愛しいと思うのは、後にも先にも彼女だけだ




「カズヤ、愛してるわ」

「俺も愛してる」

「ふふ、嬉しい」




艶めかしく微笑む蘭
俺より年下とは思えないほどの色気をもつ蘭に、俺は溺れている

親同士が決めた結婚相手だがそれは俺たちの意思に反するものではなかった
俺たちは初めて会った時からお互いに惚れていた
きっとそれはもたらされた運命の出会いだった

俺たちは出会うべくして出会ったのだと、柄にもなく神の存在を信じ、感謝した




「蘭」

「なぁに?カズヤ」

「またしばらく、一緒にいてやれなくなる」




蘭を後ろから抱きしめそう告げる
テニスのU-17日本代表合宿に参加することにしたのだ




「そう…」

「すまない」

「いいの、謝らないで
私はテニスをしているカズヤ大好きよ?
だから応援しているの」




テニスのため
より強くなるために俺は様々なことを犠牲にした
蘭に寂しい思いをさせている自覚はあったし、彼女に申し訳ないとも思っている

しかし蘭はいつもこうして嫌な顔せず笑顔で俺を送り出してくれる
蘭が無理して笑顔を作っていることくらいわかってる
それでも俺は蘭の強さに甘えてしまっている




「そう…日本代表に、
ふふ、確かにカズヤは日本人ではあるけどほとんど日本でテニスしてないのにね
なんだか面白い話ね」




つとめて明るく笑う蘭に愛しさがこみ上げ抱く腕に力が入る




「すまない蘭
いつもお前の優しさと強さに甘えてばかりで」

「謝らないでって言ってるでしょう?
それに、私が強くいられるのはカズヤのおかげだもの
どんなに離れていても、一緒にいられなくても、カズヤが私のことを想ってくれるから、大事にしてくれるから、私はどんなに長い時間でもあなたを信じて待っていられるのよ?」




本当に、蘭には敵わないな
俺は恵まれている、こんなに魅力的で素晴らしい女に巡り会えたのだから…

蘭以上の女なんていない
だから俺はお前を愛する
今はこうして自分のやりたいことを優先してしまっているが、いつか必ず蘭に我慢させた分を返していこうと思う

だから、今だけは




「俺の我儘を許してほしい」

「ふふ、私の方がカズヤにたくさんワガママきいてもらっているもの、このくらい大したことないわ」




くるりと体勢を変えこちらを向く蘭
愛くるしい瞳に見つめられ思わずその頬に触れる
蘭は俺の手に自分の手を重ね目を閉じた




「カズヤがあまり無理をしませんように
強い人たちと戦って楽しんでこられますように
どうか体を大事にして、私のことは気にしないで
お姉様にお母様、おばあ様にとてもよくしてもらっているから毎日が楽しいのよ
だからカズヤも、楽しんできてね??」

「あぁ」




背伸びをした彼女が唇を寄せた
しかし、身長差があるせいで俺が直立している限り彼女からキスをすることは叶わない




「蘭」




愛しい名前を呼び、少し屈んでキスをした
唇に触れるだけのキスだったが絡む視線が熱を帯びる




「やっぱり私からキスできないのは悔しいわ」

「そう膨れるな、したいときはそう言えばいい」

「なんだか悔しいわ」




少し考えるようにしたあと、何かを思いついたのか蘭に促されるままにソファに腰掛ける




「見て!ソファの上なら身長差は関係ないわ
これなら私からキスできるわね」

「そうだな」




満足気にキスをしてくる蘭
ただキスをしているだけなのにこんなに愛しさが溢れるなんて、俺は相当 蘭に心酔しているようだ

離れている時間がつらいのは、彼女よりもむしろ自分の方なのではないかと自らを嘲笑した




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