高校生
□溺愛
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もっと俺に溺れろ
俺しか考えられないように
俺無しじゃ生きられないくらいに
もっと、もっと…
「おっかしら〜」
背後から突然飛びついてきても驚かない
突然、ではないからだ
こいつが来るのはわかっている
大した重さじゃないこの小動物がどんな衝撃で飛びついてこようとも受け止めるのは容易い
「なんだ?蘭」
「ひーま♪ 構って?」
無邪気な童のように言う蘭
いや、無邪気というのは語弊があるな
こいつはむしろ邪気の塊のような女だ
愛らしい容姿とは反対に腹の中にはドス黒いものを持っている
まぁ、そんな所もこの女の魅力のひとつと思う俺は、相当こいつに惚れているらしい
「俺は暇じゃない」
「ケーチ」
「何とでも言え」
「いいよ、ツキに高い高いしてもらうから
ツキのがお頭より背高いし」
この女はわざと他の男の名前を出し、わざと俺に無いだの、俺と違うだのという比較を口にする
その言葉が俺の心を動かすことを知っているからだ
毎度、この女の手に乗せられる自分もどうかしてるとは思うがどんなことでも俺が他の男に劣っているのは腹がたつ
『あっくん(遠野篤京)にトリートメント借りた〜、髪サラサラ〜』
『修二クンにセグウェイ乗せてもらったんだ〜、ラムもあれ欲しいなぁ』
『見て〜お肌ツルッツル
いっくん(君島育斗)からスキンケアしてらっちゃった〜』
この女はよくもまぁ、こんなにホイホイ他の奴に懐く
あいつらもあいつらだ、蘭に甘い
「待て」
「ん?やっぱり暇になった?」
「相手してやる」
「やったー」
いや、こいつに1番甘いのは俺だ
自分でもわかっている、どうかしてる
こんな女、捨ててしまえばいいものを俺はそれをできないでいる
この小動物のようにか弱く、腹黒い性悪女が愛おしくて仕方がないのだ
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