中学生

□サギとカモ
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詐欺師
みんなは彼をそう呼ぶ
彼が詐欺師なら、さしずめ私はカモだろうか
詐欺師の術中にまんまとハマる愚かなカモだ




「雅治っ…、んぁっ…好き、好きだよ…雅治…」

「可愛いぜよ、蘭
もっと鳴きんしゃい」




可愛い、キレイ、いい子
雅治は甘い言葉をくれるけど決して確信に触れることは言わない
好き、だとか、愛してるなんて言葉を雅治は口にしない

メールの文面を見返しても雅治からの言葉は確信にせまることは書いてなくて、なにも知らない人がこのやりとりを見たら私のただの片思い

それでもいいの、私は雅治が好き
いつか雅治が私のことを好きになってくれるまで私はあなたの下で鳴き続けるし、いくらだってあなたに愛を囁くの

私は、詐欺師に騙された哀れなカモ




「待てよぃ」

「っ…、ブンちゃん」




いつものように雅治のところに行こうとする私を止めるのはクラスメイトの丸井ブン太
ぎゅっと掴まれた左手首からブンちゃんの体温が伝わる




「行くなよ、蘭
お前だってわかってんだろ?あいつはお前のこと何とも思って…」

「わかってるよ」

「なら、どうして…」

「だって、それでも雅治が好きなんだもん…
例え雅治に何とも思ってもらえてなくても
私は雅治といられるだけで満たされるの…雅治がいてくれたら、それでいいんだもん」

「なんであいつなんだよ…
お前にはもっと、お前を大事にしてくれる奴がいるだろ??
どうして自分を大事にしねぇんだよ…」




私の手首を掴むブンちゃんの手に力が入る




「痛いよ、ブンちゃん…」

「わりぃ、」




ブンちゃんの瞳が私に訴える
ごめんね、ブンちゃん
ありがとう、ブンちゃん

ブンちゃんの気持ち、知ってるよ
いつも優しくて私を気遣ってくれて
私のことを大切に思ってくれてるブンちゃん

あなたの優しさに甘えられたら、きっとこんなに苦しむことも叶わない気持ちに涙を流すこともないんだろうけど、優しいブンちゃんの気持ちを利用することは、私にはできないよ

ブンちゃんこそ、もっともっとあなたに相応しい人がいるから…きっと…
私みたいな人間じゃなく、もっと素敵な人がきっといるから…




「蘭、俺はお前を…」

「ダメ!…お願い、言わないで……」

「蘭……」

「ブンちゃんの気持ち、すごく嬉しいよ
でも、あなたの想いには応えられないから
私にその言葉を言わないで…
私のことを気遣ってくれる、優しい友達のままでいて、お願い…
そうじゃないと私、誰の前で泣いたらいいの?」




ごめん、ブンちゃん
あなたの優しさを利用できないとか言っといて
私はあなたの優しさにつけこんでるね
ごめん、本当にごめんなさい
優しい優しいブンちゃん………




私のやってることは雅治と一緒なのかもしれない…




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