中学生
□恋愛モラトリアム
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教室を見渡しても彼はいない
いつものサボりなのだろう
それは日常茶飯事で、特別なことではない
「雅治ー」
「ん?あぁ、お前さんか」
いつも彼はここにいる
空を眺めながらボーッとして何が楽しいのだろうか
「またサボり?卒業できなくなるよ?」
「大丈夫じゃ、義務教育なんざ出席日数とある程度のテストの成績があれば卒業できるぜよ」
「ずる賢いね」
「強か、と言って欲しいのぅ」
校庭からは体育の授業をしているであろう声が聞こえる
私も雅治にならって彼の横に横たわり空を見上げた
雲がゆったりと風に流れ、目の前の空は一瞬たりとも同じ景色にならない
「そういうお前さんもサボりか?」
「自主欠席。ずっと座って作業してる人って寿命縮むらしいし、私、長生きしたいし」
「長生きして、何するんじゃ?」
そう聞かれて、答えに困った
早死するのは嫌だけど、そう言われるとわざわざ長生きしてまでやりたいことなんてない
「んー、何だろ…
そう言われると困るけど、早く死ぬのは寂しいじゃん?せめてひ孫とか見てみたいなー」
「まだ自分の子どもすらおらんのに、ひ孫の話か?」
「言うだけタダじゃん?
雅治こそ、どうしていつもサボってるの?」
「理由なんて無いぜよ」
空を見上げながら、呟くように雅治が言う
「雅治はさ、長生きしたい?
それとも、そんなに長生きしなくてもいい?」
「そうじゃのう…、俺はいつも自分の生きたいように生きとるけんのう、今この瞬間に隕石が落ちてきて死んでも、悔いは無いぜよ」
独り言のように、それでいて確かな意思を持った声色で雅治は言った
なんとなく、わかるような気がした
だから雅治は授業をサボるし、でも部活はちゃんとやるし、いつもフラッといなくなるんだ
雅治はいつも自分に嘘をつかずに生きている
…、私とは、違う
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