Beyond the end of the world

□season1-1
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集まったみんなの回りに重たい空気が流れる。
でも、それもすぐ消えてしまった。なぜなら、今まで気づかなかったけれど、グレンの車の後ろからトラックがキャンプへ向かっていたようで、グレンの告白と同じタイミングでキャンプへ到着したのだ。

みんな心の中ではなんとも思ってないのかも。弟のダリル以外はどうせ悲しまないんだろうな。

私がボーッとそんな事を考えている中、トラックからは調達組が次々と降りてそれぞれ家族の元へと帰っていく。一番に抱き合ったのはやはりエイミーとアンドレアだったみたい。

シェーンが戻ってきた彼らに声を掛けているのを聞いていると、気になる言葉が聞こえてきたので、そちらに意識を集中させる。

「よく戻れたな。無事で何よりだ」

「あぁ、新人のおかげさ。ほら、ヘリコプターボーイ!こっちへ来いよ!」

トラックに向かって声を掛けると、保安官の格好をした男性が遠慮がちにゆっくりと歩いてくる。

「彼も保安官だそうだ」

なんと、本当に保安官だった。
相手が犯罪者とかだったらこのキャンプにはシェーンも入れて二人保安官がいることになるから安心なんだけどね、戦うのはウォーカーだもん、職歴なんて関係ない。

「父さんっ!!」

後ろから声が聞こえた、と思ったらカールが保安官に向かって走って行く。
そのまま飛びついて抱き抱えられた。状況がのみ込めないため、ローリを目で探すと、彼女もまたふらふらと彼らの方に近づき、立ち止まって、歩いてきた二人と三人で力強く抱きしめ合う。


後から知ったんだけど、彼らは本当の家族であり、保安官――リックは死んだと思われていたらしい。

それにしても、こんな世界で家族を探して当ても無くさ迷うなんて。しかも、ちゃんと再開出来たなんて、奇跡としか言いようが無い。

もしかしたら、リックはこの世界に何かをもたらすことの出来る種類の人間なのかもしれない。

−−−−−−−−−−−

その日の夜、私達は火を囲んでリックの話を聞いた。
『狼狽が一番近い』と話す彼のこれまでを想像すると、とてもじゃないけど、私なら途中で諦めてしまうと思った。

リックの話が終わった後、それぞれのテントに家族や恋人、友人などとみんなが入っていく中、私は1人寂しいテントへ戻る。

たった1人で、家族を探す。
私も似たような状況だったけど、同じことが出来なかった。海を隔てた遠い日本でも、ここみたいに以前の生活は終わってしまったのだろうか。
きっと、もう二度と家族に会うことは無いんだろうな。

こんな世界になってから、久々に涙が頬をつたう。
ここの人達はみんな優しい。旅行先で世界の終わりに巻き込まれた異国の私にもほかの人達と同じように接してくれる。だから、私もみんなに貢献できるようにしてきた。

けれど、心のどこかでは家族や友達が恋しい。
こんな夜は特に。

この日はグルグルと渦巻く様々な感情を持て余し、テントの天井を眺めながら、いつの間にか眠りに吸い込まれていった。
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