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□君は知らない
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彼と出逢ったのはいつのことだろう。
あなたの顔が、声が、全てが、一瞬の出来事だったのに忘れられなくて今もまだ思い出してしまう。

「ん〜…」
チュン…チュンチュン

いつも通りの時間に起き制服に着替え学校へ向かう、変わらない毎日。

「今日も元気に頑張ります」
毎日こう言って外へ出る。

……


「おはよー名無しさん」
「おはよー!」
「どー?一人暮らしには慣れた?」
「うん、まあね、料理とかはまだまだなんだけど洗濯と掃除は滞ってるって感じかな。順調だよ」
「良かった。ほんとかなり心配してたんだからね〜?」
「ありがと」

空を見上げると彼を思い出す、煌びやかな彼を。

「あの、さ。」
「んー?なにー?」
「九条天って人知ってる?」
「え、知ってるもなにもあのスーパーアイドルじゃないの!?何?そういうのに疎いと思ってたのにいきなりどうしたのよ」
「そうなの?実は言うと名前だけであんまりよく知らないんだ」
「んなっ…ほんとブレないわね…」
私はあははと渇いた笑いをする

……


「ふう、テレビでもつけようかな」
今日はバイトもなくやることもすべて終わってしまって久々に暇な時間が出来たので息抜きにでもとテレビをつけてみると、驚いた。そこに映っていたのは彼だった。
ライブ映像だろうか、ファンの声援に応えるように明るい笑顔で素敵なダンスでそして何より誰もを惹きつける歌声を出していた。
「ぁあ…」
1度見ただけの面識のない彼に私はいつの間にか知らないうちに。

恋だと錯覚させる何かを感じていた。

「話したこともない相手に恋なんてするわけないわよ。名無しさん、しっかりしなさい」
そう言って自分のほっぺたをパチンと叩いた。

……


「……とかなんとかいいつつTRIGGERのライブに来てしまった…」

友人の助けもあってTRIGGERのライブチケットを手に入れ初のイベント参戦を果たしてしまった私である。不覚…。

ただ単に思い立って来たのではない。アイドルについて色々調べてるうちにアイドルについて理解が深まった私は彼らのファンに対する熱を目にし、このライブへの参戦への決意を固めたのだ。

そう。九条天だけではなく皆がファンに対して誠意を込めて向かって来てくれてることを魅力的に感じた私はこのライブで確かめたかった。彼らの魅力、熱を。

「…よしっ」
頬をペチッと叩き気合いを入れる。

知りたい、彼らの想い。

いつの間にか九条天への興味だけではなくアイドルに対しての魅力の追求へと変わっていた私だった。

……


「……。」
会場に入った瞬間唖然としてしまった。
私の席は3レベルという上から見る形になる席だった。圧倒的な会場の広さ、煙のような蒸気、熱気だろうか、ファンの熱を感じた。友人からある程度ライブがどういうものかをざっと説明してもらったり自分で調べたりしたものの実際入ってみるとカラダでひしひしと感じ驚いてしまった。
「ここが、ライブ会場…」
胸が熱い…。こんなこと生まれて初めてだった。

しばらく経つと会場が暗転しはじめた。
(ごくん)
あまりのドキドキに喉がなった。

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