Gang Land:H×H幻影旅団・短篇
□EDGE(エッジ)
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『EDGE(エッジ)』
その子供は俺がやったキャラメルに頬を膨らませている。
口の中でキャラメルを転がす。
右の頬から左の頬へ。左の頬から右の頬へ。
その度に子供の顔がいびつに歪む。
俺はただその様子をジッと見つめている。
何も言わず、ただ黙って見つめている……。
読んでいた本を閉じ、ふと窓の外に目をやった。
カーテンの無いその窓越しからのぞく空は、薄らと白みがかっていた。
じきに日が昇るのだろう。
夜更けにボトル半分のジンを胃に流し込んだものの、
昨夜は結局眠れなかったという訳だ。
だが、構いはしない。
2、3日眠らずとも支障の無い体力くらいはあるつもりだ。
俺はシャワーを浴びに浴室へと向かった。
冷水のシャワーを頭から浴びた。
別に給湯器が壊れている訳ではない。元々ここのシャワーは水しか出ないのだ。
だがこの街でシャワー付きの部屋に住んでいるだけでも、割と恵まれている方だ。
俺は水だけで掻きむしるように頭を洗った。
このあいだ外から仕入れて来た最後の石鹸は、三日前に使いきってしまった。
次に仕事で外に出たときにでも、
またそういった生活用品を、いくらか仕入れて来なければならない。