■幻水 ―関西弁版―

□かそけし 予兆
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 それはうちにとっては、結構ようある事で。
 
 例えば、いきなりマ○ドのモーニングセットが食べたなって、いつもより1時間も家早う出たり。
 急に弾いた事ないギターを弾いてみたくなって、友達に譲ってもらったり。
 突然聞きたくなった曲のCD探して、何軒も店回ったり。

 突発的になんかをしたくなるんは、結構ようある事やったから。
 いつもはあんまりせぇへん部屋の大掃除を急にしたくなったんも。
 いや、そら、大掃除をしたってこと自体は珍しかったけど。
 突発事項的には、別に特に珍しいと事と、ちゃうかってんけども。

 今思ったら。
 あれを、世間一般では。
 「虫の知らせ」って、言うたんかもしれんなぁ。






「えーっと、うん。いやいやいや、待ち待ち待ち待ち」

 うん。えーっと、やな?まず、取り敢えず。
 落ち着いて、ゆっくり思い出してみよか?

 ぱっと出てくる所から。
 記憶の糸を、手繰り手繰りで。

 えーっと、まずやな。今日は仕事が休みやって、いつもの友達連中と遊んで。
 ほんで、遊んでお茶して買いもんして、いつもの駅で、皆と別れて。
 うん、そう。ほんでいつもの道を普通ーに家まで、歩いて帰っとった途中やった筈やねんけど。
 
 うん、そうそう、そうやねん。そうやってん。そうの筈やねん。

 それが何でな?

 ふと、目ぇ開けたら。
 こんな昼尚暗い、鬱蒼とした森の。
 池のほとりになんか寝てるんですか、私。



 そう、ここは森の中。
 昔、学校の遠足で行ったみたいな、人の手の入った様な開けた森じゃなくて。
 自然の、在るがままに生き続けて成長してきたような、深く、重く、濃い空気の漂う、森。


 ちょっと前に、目ぇ開けて。
 まず最初に、視界に入ってきた地面の雑草は、見たこともない種類のもんで。
 寝起きのぼやけた頭でも、ごっつー違和感感じて。
 転がったまんま半目で。
 目の玉だけ動かして周りを見たら、これっぽっちも見覚えのない場所で。
 で、慌てて両腕つっぱって、体半身起こしたら。


 森。
 

 どこやねん、ここ。


 そら、突っ込むやろ、とりあえず。


 
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