戦う!セバスチャン

□飛んでけ
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この人の、こういう無意識の優しさが大好きだと感じる。
オレはふと耐えきれずに笑った。
たった一言でこんなに心が温かくなる。
「傷、見せてくれるか?」
オレの表情が変わったのを見てから、デイビッドさんは言って手を掴む。
「結構深く切っちゃったみたいだなあ。」
「いえ、大丈夫です。」「こんなに血が出てるのにか?」
改めて自分の手を見てみれば、じわじわと溢れる血は止まらずに指を伝っていく。

いや、まあ…確かに痛いんだけど。
我慢できないほどでもないし、これ以上心配させてしまうのも嫌だから。
もう一度、指を口に含んでへらっと笑っておく。そのくらいじゃ血は止まらないけど、言っても無駄だとデイビッドさんも理解したらしい。

「よしじゃあ俺が痛くなくなる、おまじないしてやろう!」
「え?」
デイビッドさんはオレの手を掴み、片手を上にかざす。

「痛いの痛いの、飛んでけ〜。」

「…。」
天然、なんだろうなこの人はこれで。
「どうだ?」
「…どうって。今時子供でも引っかからないんじゃないかと。」
とりあえず正直に感想を言えば、軽く落ち込まれてしまった。
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