いただきもの

□深陵梨緒様よりvV
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「デート、しようか」

昨日、ユーゼフ様が唐突に言った言葉に、不覚にも喜んでしまった俺。
何とか説得してセバスチャンから一日休みを貰った。
そして空は晴天。絶好のデート日和(ユーゼフ様曰く)。
ユーゼフ様の容姿からしてお忍びデートなんて出来るとは思っていなかったけれど……

「今日は一段と視線を感じるねぇ」
「そりゃこんな天気の良い日に傘なんて持ってると誰だって見ますよ」

しかも不釣り合いな真っ白い傘だし。
いやだからと言って黒とか持ってても困るんだけどな…
俺は小さく、けれどユーゼフ様に聞こえるように溜息をついた。

「Bくん、どうして傘はいらないんだい?」

不意に、彼は問う。
「は?…いや、だって晴れてるし、雨は降らないって天気予報で」
「あくまでもそれは『予報』だろう?彼らは、降らないでしょう、としか言わない」
「………はぁ」
確かにそうだけど。
俺は曖昧に頷いた。
彼は続ける。
「所詮は人間の言葉だ」
言うや否や、ユーゼフ様は傘を差した。訝しげに見ていると、肩を引き寄せられ傘の中に。

「濡れるよ?」

次の瞬間、凄まじい音と共に大量の水が降ってきた。
「…え、何で……」
「ホラ、持ってて良かっただろう?」
くすくす、ユーゼフ様は笑った。


街の人間が突然の雨に戸惑う中、ぽつんと白い傘が一つ。
まるで二人だけの世界、なんてキザな事は言わないけれど、言いたくないけれど。そう思ってしまったりして。
「せっかくのデートが台なしだねぇ」
「……もしかして、狙いました?」
ユーゼフ様は微笑う。

「君と相合い傘なんて、レアだろう?それとも、嫌だった?」

ああもう……そんな顔で笑われたら…

「……いいえ」

嘘でも嫌だなんて言えねえよ。


「このまま歩く?それとも、何処かに入る?」
「…いえ。もう少し、もう少しだけ……」




貴方の温もりを

いつも以上に感じられる

この距離でもう少しだけ

貴方の 傍に、、、















-fin-
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