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□デーデマン父とデイビッド
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「お、大旦那ちょうど良いところに!」
日課のようにセバスチャンの麗しい姿を見るために屋敷をうろついていたわしは、向かい側からやって来たデイビッドに声を掛けられた。
「何じゃ、珍しいな。わしに何か用なのか?」
デイビッドは立ち止まったわしに人なつこい笑顔を浮かべた。
…この顔は反則じゃ。
「いやあ、今日って父の日だろー。」

そういや、そうだったかもしれんな…?
まあ我が息子など父の日を祝ってくれたこともないから気にしておらんかった。
わしがほぼ屋敷にいなかったせいもあるが…。
だからデイビッドが何を言い出すのか全く予想出来なかったのだが。

「いつも世話になってるからな!俺からの気持ちだ!」
デイビッドはそう言って、ラッピングされた包装をわしの手に乗せてきた。
…手作りのクッキー、だろうか?
驚いてデイビッドを見ると相変わらず嬉しそうに笑っていて。

だから反則だと言っとる…。
この男は、自分の好みなどではないのだ。
ないのだ、が。
こんな風に無邪気に笑いかけられたら。
純粋に好意を寄せられている気がしてしまう。
つまり、悪い気はしないということ。
…それどころか、嬉しいなどと思ってしまうとはわしもだいぶ重症じゃ。

「おお、すまんな。」
「今日のは特に自信作だぞう!」
出来るだけ何でもない風を装って受け取る。
でもデイビッドが笑顔でいるものだから。
いつの間にかつられて笑ってしまっていた。
他意などないだろうに。
自分だけがこやつにはまっていく。
何だかものすごく悔しいんじゃが…。

「デイビッド、食わせてくれ。」
「…は?!」
何となく言ってみた言葉だったのだが、デイビッドには効果はないらしい。
あっけらかんと笑われただけ。
「やだな大旦那、そんなの父の日サービスに入ってないぞう?!」
「…だろうな。冗談じゃよ。」
自分ばかりが言葉に、態度に振り回される。
「あはは、そうだよなあ。」
…悔しいけれどこれが現実。
「ではありがとな、デイビッド。」
「おう!」
わしはひらひらと手を振り、その場を後にした。

突きつけられた現実は思いのほか心にずしりと重くのしかかったけれど。
今日は、手作りの菓子を貰えただけで良いことにしよう。


END

これは父の日にアップしたのか、な…?全く記憶にないけれど。
この二人がラブラブなのは考えられないから、片思いで良いと思います。
多分かなり初期に書いた作品なので、文章の書き方など今とちょっと違うかも。というか私は違うような気がしました(笑)
ここまで見て下さりありがとうございました!
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