戦う!セバスチャン

□こんなにも
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彼はいつも笑顔だ。
温かくて優しいその表情は見ていて気分が良い。
だから、と言うわけでは決してないけれど。
…厨房で二人きり。
そしてその笑顔がすぐ傍にきたから。

彼の頭を引き寄せて、唇を重ねていた。

それは自分にとっても思いがけない行動で驚いてしまったのだけど。
デイビッド君は同性にキスされても特に気にはしないのかなとか頭の隅で思いながら、慌てて体を離した。

「お向かい、サン。何っ…?!」
ああけれど、それは僕の勝手な思い込みでしかなかったようで。
いっそ冗談だと笑い飛ばしてやりたかったけれど、デイビッド君の強張った顔を見てしまっては何の言葉も出てこなくて。
呆然と口を手で覆うばかりの彼に、もちろん笑顔なんてなくて。

手を伸ばしたら反射のように避けられてしまったから。
「…帰るよ。」
謝ることさえ出来ずに、僕は厨房を後にした。
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