[2]

□花火
1ページ/1ページ

ドォン、ドォンと大きな音をたてて花火が夜空を彩る。
「きれいですね。」
ユーゼフ様のお屋敷の屋根に二人登って、遮るものが何もない絶好の状態で花火を眺めている。
ぴたりと寄り添って座ることに心臓はばくばくいいっぱなしで、花火も終盤だというのにずっとそんなままだ。
「そうだねえ。」
「…って、ユーゼフ様本当に花火見てます?」
心臓がうるさいのには寄り添ってる以外にも理由がある。
ユーゼフ様は、なぜかずっとオレを見ているのだ。
一度視線を感じて隣を見たら、優しく微笑むユーゼフ様と目が合ってしまい…それからは恥ずかしすぎて隣を向けないでいる。
でもずっと優しい視線を感じていた。

「花火を楽しむB君の方が綺麗だから。」
「…っ!」
ああもう絶対オレ今顔赤い。
というかこの人こんなにどきどきさせてオレを殺す気だろうか、とさえ思ってしまう。
ふいに花火の音が止んだ。
「あ…もう終わりか。」
話を逸らすように呟く。
一度止んで、最後に一斉に打ち上げられて終わるというのがパターンだった。
「もの足りない?なら、あと一万発くらい追加させようか?」
ユーゼフ様が冗談とも本気ともとれるような口振りで笑った。
オレは緩く首を振って、ユーゼフ様に向き直る。

「もの足りないくらいで良いんですよ。また来年、楽しみに思えるでしょう?」
一緒に花火を見る時間が終わるのは寂しいけれど。
ユーゼフ様は笑みを深めた。
「そうだね、じゃあまた来年、再来年もずっと一緒にこうして花火を見ようか。」
そうしてほしい言葉をくれるから。
約束を、くれるから。

ひときわ大きな音と共に夜空が明るく染まる。
けれどオレの瞳には目の前で花火よりも美しく笑う大好きな人しか映らなかった。


END

何か大きな花火大会というより、どこどこのお屋敷主催的なお屋敷街だけのイベント的なイメージが勝手にわきました(笑)
でもお金持ちなので結構盛大に花火打ち上がってる的な。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ