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□気づきたくなんか
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おそるおそる、その人に近づいてみる。
ばち、と視線があってしまってオレは反射的に次に襲ってくるはずの瘴気に備えた。
「お、B君どうしたー?」
けれど襲ってきたのは優しい声と、笑顔と。
安らぐような癒やしのオーラだけで。
ぎゅっと胸が締め付けられるのを感じた。
…今まさにオレは気づいてしまった。
気づきたくなんかなかったことに。
「あ、向こうのB君だったか!どうした、何かあったか?」
笑顔のデイビッドさんと向かい合うのは不思議な気分だった。
普段なら姿を直視することもままならないし。
…この人、こんな風に笑うんだな。
オレに向かってこんな優しく笑えるんだ。
そう考えたら何か泣きたくなってきた。

「あ…。」
さすがにいきなり泣き出すわけにもいかないし、何でもいいから言おうと口を開こうとしたら。
「デイビッドさああん!」
ものすごい勢いでこちらの世界のオレがやってきて、ためらうことなくデイビッドさんに抱きついた。
「おーB君、大丈夫か?」
「瘴気…瘴気が…!」
ぐりぐりとデイビッドさんにくっつくこちらのオレと、そんなオレの背をを優しく撫でるデイビッドさん。

一番見たくなかった光景だ。
だって自覚してしまうじゃないか。
やっぱりオレはデイビッドさんが好きなんだって、ちゃんと顔を見ただけでそう感じてしまった。
その上こんな風に分かりやすいほど具体的に見せつけられるなんて。
…こちらのオレが無条件でデイビッドさんを信頼して全て預けてるのと同じように。
いやそれ以上に、オレはあの人を求め焦がれているんだって。

こんなこと気づきたくなんかなかったのに。

END


久しぶりの向こうの世界のデビBでした。や、向こうのデビは出てきませんが。

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