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□デーデマン父とデイビッド
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包丁一本で、こんなに料理が楽しくなるとは思いもしなかった。


「デイビッドおるか?」
ひょこっと厨房のドアから顔をのぞかせたのは大旦那だった。
俺は仕込み中の手を止めて顔を上げる。
「大旦那どうしたんだ?珍しいなー。」

正直ここへ顔を出すことがあるとは考えてもみなかった。
大旦那と厨房、って何だか面白い組み合わせだなあ。
ずかずかと部屋に入ってくるその姿を目で追っていると、俺の前で立ち止まり平たい箱を差し出してきた。
「これをやる。」
「何だ?」

ひとまず受け取り、箱を開けてみるとそこには一本の包丁が。
刃がきらりと光っていて切れ味が良さそうだ。
「貰って良いのか?」
「わざわざ職人に作らせたんじゃ。お前が貰わんでどうする。」
特別な日でもないのに贈ってもらって良いんだろうか。
それは切れ味を確かめるまでもなく、立派なものなんだと分かるから。

「いつも美味い食事を作ってくれる礼だ。おかげで舌が肥えたわい。」
「…サンキュ、大旦那!」
そう言われてはもう快く受け取るしかない。
それに、大旦那の言葉はすごく嬉しくて。
こんな風に直接褒めてもらえて顔が綻ぶ。
「これからもますます精進するといいぞ。」
大旦那もふと笑った。


「うむ。また腕が上がったのうデイビッド。」
後日俺の作った料理に舌鼓をうちながら、大旦那は言った。
たった包丁一本貰っただけだけど。
嬉しくて、料理がますます楽しくなって。
これからも大旦那がそう言ってくれるなら、俺はどこまでだって高みを目指すだろう。

単純だけど。
俺にとっては恋に落ちるのに十分すぎる贈り物だった、らしい。


END

何ていうか今なら書けないなあと思いました。内容も文章運びも。
しかし何を思ってこのCPなんだ…(笑)
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