□不和が広がる
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『なに二人でこそこそしてたの』

「いや、特にこれと言って深い意味は…」

『…ふーん?』

しゃがみ込んでいるアレンとラビに、少し前屈みになりながら二人の顔を覗き込む玲子。たいして興味を示さなかった玲子。その様子にラビとアレンの二人がほっとしたのも束の間。


『調度良かった。二人ともちょっと付き合ってよ』

「えっ?」


ニコリと笑みを向けられ、「こっち、こっち」と腕を引かれついていく。そこは、エクソシストの誰もが使う修練場だった。
玲子は最近体を満足に動かせていないらしく、訛ってきていると感じていたらしい。一人だけのトレーニングには限界があり、相手が欲しかったところだという。

突然のお誘いにキョトンとする二人を余所に、玲子はすでにやる気モードに入り構えている。


『手加減なしで。本気で願いね』


それはもう、目付きまで変わり見るからに手合わせモードに入った顔をしていた。


「で、でも玲子さんが怪我してしまいますよ?!」

『一対一が良い?それとも二対一?』

「話聞けって…それは流石にハンデあり過ぎじゃね?」

『いいのいいの。…体動かしてないと落ち着かないからさ』


少し自嘲じみた笑顔を浮かべる玲子。何となく玲子意味を汲み取ったアレンとラビの二人は、顔を見合わせて「しょうがない」といった風に肩を竦めると、玲子の相手をすることにした。



そこから始まった手合わせ大会。
それはもう激しいの一言に尽きる様子だった。

始めは一対一での手合わせだったが、徐々に二人は本気になり、一対二に変更していった。
玲子もその二人に合わせて徐々に加速していく。

玲子の速度は上がり、次第に二人はついていけなくなる。そして息を切らしながら防戦一方となっていった。


「(これでイノセンス無しとかマジかよ…っ!)」


ラビは玲子の攻撃を受け流していくので精一杯。それはアレンも同じだった。
それなのに、玲子にはまだ余裕があるように見えた。


「(…やっぱ相手が違うか)」


ラビはいつも玲子と手合わせしている相手を思い浮かべ、苦笑した。

玲子のいつもの手合わせの相手は神田だ。
神田はいつも容赦無くいくところがある。それが玲子にとっても調度良い相手であり、師でもあった。

型で押してきたかと思えば、次は変則的に攻めてくる厄介な戦い方だ。二人で攻めようにも、先を読まれて仕方がない。

ラビが足払いをしようとすれば、それも躱され空を蹴る。そして支点にしていた手を反対に足払いされ、バランスを崩した所に容赦無く玲子の蹴りが入り込む。


「かはっ…!」
『鈍い』


集中しているのか、いつものような優しい言葉はそこには無かった。そこにいるのは、ただの手合わせの鬼。

アレンはラビに少し休んだらどうかと提案し、アレンと玲子の一対一が始まる。ビュッ、と拳を突き出せば、その拳を受け流される。それと同時に腕を掴まれ、力が流れるように行き場を無くし、玲子にされるがままになっていた。
気付けばアレンは伏せる形で床に縫い付けられ、玲子はアレンの腕を押さえ付けていた。

アレンもラビ同様、手も足も出ずのされてしまった。


『鈍い』


そしてまた、同じ言葉を呟く。


「…僕達が鈍いんじゃなくて、玲子さんが早過ぎるんですよ」
「そうさ、それに動態視力もよかったろ?」




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