□不和が広がる
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なんとかして元の仲に戻したいと思っても、他が手を回せばあの神田の事だ、自棄になって意地を通すかもしれない。

どうしたものかと、こちらがもやもやして落ち着かない。

そう考えているうちに、いつの間にか神田はもうすでにその場にはおらず、もう、と少しため息をつきながらリナリーも神田といたその場を後にした。





******





神田とすれ違い、玲子の足はぼんやりと進んでいた。
行き先の決まっていないその足音はゆっくりとしたものだった。


玲子がダークマターの影響を受けていると知った時の神田の目は、酷く驚き、それに勝る困惑の色に染まっていたのを覚えている。

そしてその驚きの目から一転、怒りにも似た感情が浮かんでいる目へと変わっていった事も知っている。

ショックと驚き、困惑、裏切られたというような悲しみに似た怒り。
その感情の移り変わりが神田の目に浮かんでいた。


『見損なわれたかな…』


はは、と乾いた笑いが込み上げてしまった。

汚染された身体だと幻滅されただろうか。
そのうち、裏切るのだろうと見放されただろうか。

どう考えてもあの目、あの表情は「拒絶」されているようにしか思えなかった。

拒絶されているのを分かっていて、神田に近づくほど自分には度胸はないかもしれない。拒絶が怖いから。


『…どうしてこんな事になっちゃったのかな…』


頭上を見上げてみれば、そこはまるで囚われの身でもあるかのように、重くそして高い天井があるだけだった。
天井を見上げたところで、何の問題の解決にもならないのに、気持ちはそこから動けなくなりそうになった。



アレンとラビは、玲子の様子を見に行っている。

神田との関係がうまくいっていないのは教団の中ではすでに有名事項となっていた。

それに歓喜の声をあげるものもいれば、何故と疑問を浮かべるものもいた。その疑問は浮かべば考えたくなり、探りたいと思うものもいるかもしれない。それは人間の性だ。

しかし、疑問となる原因までは明かされていないため、ただの喧嘩だろうと思う者が大半だった。

だが、何も知らされていないファインダーや一部の科学班とは異なり、すべてを明かされているエクソシストは原因を知っている。神田が玲子を避けるのは、玲子がアレンと同じく危うい立場に立たされているからだ。

しかし、ただそれだけの事で神田玲子を避ける理由になるのだろうか。

神田が玲子を避ける本当の理由は、エクソシストでも分からない。

困惑からかのか、嫌悪感からなのか、他に何か理由があるのか。
きっと本人たちも分かってはいないのだろう。


「…あの二人、本当に今仲が悪いみたいですね」

「ああ、何かスゲー気まずい感じだなー…」


不仲は継続中らしいあの二人。

しかし、不仲が継続中であっても、教団は機能を失わない。

どんなに喧嘩していようと、どんなに気持ちが滅入っていようと、任務は入るし、アクマの破壊はしなければならない。
それは数少ないエクソシスト達の指命だ。

今更どうにもならない。


「神田が玲子離れしたのはいいけど、こりゃ流石に気まずいさ」


流石にまずいというのはどういう意味か。ラビの言葉にアレンは関係ないと言わんばかりにラビに言う。


「神田何かどうでもいいですよ。それより、玲子さんの方が心配です…」


アレンは、自分と似たような立場となっている玲子が気掛かりで仕方ない。

この間、コムイがリナリーと共に玲子の状態について話をしていた。リナリーのイノセンスは変化し、結晶型と名づけられ、玲子のイノセンスは未だかつて本領発揮をしたことがないという。

それはイノセンス適合時からずっと、玲子のイノセンスはダークマターの影響を受けていたからだと聞いた。

しかし、それだけにしては疑問点が浮かび上がる。エクソシストの皆の前で話された内容は一部だけなのだと思うのだ。




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